イタリア服地の里、ロロピアーナ社訪問リポート
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ロロピアーナ本社工場とその周辺 ロロピアーナ周辺地図


久しぶりの訪問

当店で素材を多く取り扱うロロピアーナ社にこの6月訪れた。ロロピアーナ本社工場はミラノマルペンサ空港からクルマで1時間ほど走ったピエモンテ州にある。(上右の地図参照)

ロロピアーナ社は原料の羊毛購入から糸作り、織り、仕上げそして販売までの一貫生産で高級毛織物だけを作るメーカーとしては世界一の生産量を誇る。通常生産量の大きい会社は需要の多い普及品をメインにに高級ゾーンもつくるということが多いがこの会社のユニークなところは高級素材だけを作りそして生産量が多いこと。こういう会社は世界でも類を見ない。毛織物会社も多いこの地域でクアローナに本社毛織工場、ロッカピエトロに紡績と研究所、ビエッラに仕上げ工場そしてゲンメにウーステッド(梳毛)糸を中心とした紡績工場と4つの工場で生産を行なっている。今回はワインで有名なガッティナーラに宿をとり有名なタスマニアンの糸を生産するゲンメ工場と2010春夏のコレクションのミーティングにクアローナ本社工場に行くことになった。13年前に初めて訪れて以来5回訪問しているが今回は7年ぶりの訪問になる。ロロピアーナの工場には服地作りのノウハウが集中して一般の方は見学することはできない。当店が18年以上続けてロロピアーナ素材の販売しているのを評価いただき今回見学をセッティングいただいた。お招き頂いたロロピアーナ社およびスタッフの皆さんに感謝。

午後6時雨のミラノマルペンサ空港に着きクルマでガッティナーラに向う。ことし5月6月ミラノは雨が多かったようだ。気温は雨のため高くない。ガッティナーラのクラシックなホテルでロロ社のスタッフと落ち合う。そしてガッティナーラ産ワインを楽しみながら夕食を取る。ワインについては詳しくはないがどうやら本来動かしてはいけない酒らしい。だから現地で飲む酒=地酒が最高なんだろう。ワインの味は若々しくもうわついた軽さがなくしっかりした味ですばらしかった。

セジア川 ワインの町看板 ぶどうの木の丘
セジア川沿いの織物工場。周囲は緑の山 「ワインの町、ガッティナーラ」の看板 葡萄の木が並ぶ丘

ゲンメ工場見学 ウーステッド糸を作る。

朝、ロロピアーナゲンメ工場に向う。ここはウーステッド糸の工場だ。ウーステッド=梳毛、つまり毛羽立たない繊維が平行に並んでいる表面の滑らかな糸のこと。紳士のスーツは羊毛でつくらているのにウーステッド糸を使っているため毛羽立ったりしていない。それに対して表面が毛羽立っているツイードやカシミアのコート地などはウーレンと言われる。ロロピアーナ社の代表的なウーステッド織物と言えば当店でも人気も高いタスマニアン130s。タスマニアンシリーズはカシミアと並んでロロピアーナでは看板商品。したがってこのゲンメ工場はロロピアーナでも重要な工場といえる。洗った原毛を機械で繊維をほぐし束ねてロープ状のスライバー(篠)にする。何台もの機械を経てどんどん細く羊毛の繊維を並べて行く。糸の外に飛び出す短い繊維は取り除く。この工程を経て撚り合わせて滑らかな糸に仕上げて行く。糸を紡ぐ紡績工程は糸切れなどが発生するとそれを修復する人員がいるがこの工場では糸切れの修復などはすべてオートマチックにロボットがおこなうのでかなり大規模な工場なのに従業員の姿は10人以下と極めて少ない。ゲンメ工場は最先端の紡績工場といえるだろう。そしてこの工場内にあるラボラトリでは各種品質検査が厳密に手作業で行なわれている。たとえばスーパー130sに企画したものがちゃんとその通りに出来ているかどうかを検査する部署なので工場の心臓部ともいえる。ここでスタッフに説明を受けたのが「ビゴロ」という染め方。出来上がった糸をさらにプリントでまばらに色をつける手法。以前はいろいろなメーカーがやっていたそうだがいまはあまりやるところがないらしい。ロロピアーナでは美しく深いグレイの服地を作るためいまでも行なっている。良いものを作るために新しい技術だけでなく古い手法も取り入れ手間を惜しんでいない。

ロロピアーナ梳毛工場 何台もの機械を経て糸を滑らかにしていく 糸にまざりものがないか検査する
ゲンメ工場の入り口Filatura Pettinataつまり梳毛工場と記している。 何台もの機械を通して毛羽をとり繊維の方向をそろえていく。 繊維のなかに夾雑物がないか検査する。

クアローナ、ロロピアーナ本社工場 快適な環境を守る努力。

その後クアローナの本社工場に向かう。いつも冬の一月に来るので気がつかなかったがこの周辺は緑が美しく近くを流れるセジア川は水量も豊かだ。毛織物には良い水が重要。クアローナ本社工場もこのセージア川に沿って作られている。このすばらしい水を使いそしてうつくしいこの山河を壊さないよう、本社工場では使った水を使う前よりも美しくする浄化設備が完備されている。バクテリアで使用した水の汚れを分解するための池が2つありそしてその後化学的に処理され活性炭で最終的に浄化し魚も住める状態にしてから川に還す。


本社工場には毛織りの工程とフィニッシング、デザイン機能、本社機能が集約されている。ひさしぶりに本社工場に訪れたが以前と比べとてもオフィス環境が美しく整備されていた。オフィスの大きい窓から陽光が差し込みとても服地の色が見やすい。そとの緑を眺めていたら羊毛の仕入れ責任者であるピエールルイジロロピアーナが通りかかった。カリスマ、CEO セルジオロロピアーナと実弟ピエールルイジロロピアーナがロロピアーナ社の屋台骨を支える。ロロピアーナ製品のすばらしさの大きな理由の一つに原料の良さがある。ロロピアーナ社では世界の産地で産出するメリノ、ウール、カシミアそして希少繊維ヴィキューナなどの見極めに羊毛の世界的バイヤーであるピエールルイジロロピアーナが自ら現地に出向き吟味して原料を購入している。商社に任せるのではなく最終製品までしりつくした人間が原料を購入するというのは製品になった時やはり違いが出てくるものだ。

ロロピアーナ水質浄化池 処理後の澄んだ水を泳ぐ魚 Loro piana
廃水を浄化するための3つの池 浄化したあとの澄んだ水で泳ぐ魚 ロロピアーナ本社工場の貯水塔

来シーズンの春夏 2つの新しい素材

今回の重要な目的の一つは来年度の春夏コレクションを見る事。毎年新しい素材をリリースするロロピアーナ社だが来年の春夏は「THE WAVE」と「Lightest」の2つが新発売される。「THE WAVE」は2つの大きな特徴がある。特徴その1高品質シルクにスーパー130sウールを巻き付けたハイツイスト極細糸を使用。特徴その2それを3本よりあわせた糸(スリープライ)を平織りにした服地。二つの特徴により1mあたり210gと軽く強い。いくつか試作品のスーツも見たがなめらかでシワになりにくい優れたスーツになりそうだ。無地ストライプなどエレガントな色柄がリリースされる予定で来夏の当店の主力商品になることが予想される。ロロピアーナ社もこの素材にちなんで著名な写真家クリフォードロスに依頼し写真集を出すほど力をいれている。

「Lightest」は名前のとおり1mあたり150gといういままで聞いた事のない軽い服地のコレクション。まだ日本で発売されるかどうかも未定の素材だがもう日本のバイヤーの中でも話題になっている服地。「Lightest」についてはまず来夏にはダークブルージャケット用に使われると予想されるが軽い着心地の上、案外しっかりした素材感で心配された縫製もそれほど困難になるわけでもなさそうだ。

ロロピア=ナ社エントランス ピエトロロロピアーナ胸像  THE WAVE
ロロピアーナ社エントランス 織物工場創始者ピエトロロロピアーナ胸像 THE WAVEの織マークと写真集

仕事のあとのお楽しみ その1 ゴルフとワイン蔵めぐり

仕事が長引きレストランが閉まっため軽い食事をしに向かった先はボゴーニョという近所のゴルフ場。庭先のバルコニーでパニーニとピールを飲みながらフェアウェイを眺めているといてもたってもいられなくなり急遽プレーすることになった。14年イタリア通いを続けているがゴルフのプレーは初めて。イタリアのゴルフ場は正直あまり期待していなかったが手入れも行き届いてハザードもしっかりある美しいゴルフ場だった。ヴィラが点在してる美しいゴルフ場でゴルフを楽しんでしまった。スコアはなんとかボギーペースでした。

その後ワインセラーに行った。DOCGとして認められたガッティナーラのワインは高名なバローロ、バルバレスコと同じくネッビオーロ種で出来ていて日本ではあまり知られていないがイタリア人にとっては良く知られたワインだ。ワイン蔵ガッティナーラ産ワインをはじめとしてこの地方のワイン各種あったが説明してくれた女性におすすめはどれと尋ねる。さらにどんな味なんですかと聞くとその瓶を開いて味見をさせてくれた。おいしい!その気前のよさに、海外からワインを持ち帰ることの困難もかえりみず一本買ってしまいました。さすが産地で一本15ユーロとけっして高くない。

ボゴーニョのゴルフ場にて ワインが無料で試飲できる ワインセラー
bogognoのゴルフ場 ワインを無料で試飲 ワインの試飲レストラン

仕事のあとのお楽しみ その2 世界遺産バラッロのサクロモンテを訪ねて

この時期のイタリア、サマータイムもかさなり夕方になっても日が落ちない。まだまだ午後8時を過ぎてもまだまだ明るいのでクアローナ工場から約15分のところになる世界遺産でもあるヴァラッロのサクロモンテを訪れることになった。サクラモンテ(聖なる山)は山に複数のお堂を建ててそのなかに キリストの生涯のジオラマをつくりお堂を登りめぐりながらキリストの生涯を追体験する史跡。15世紀、キリスト教の聖地イスラエルがイスラム勢力に占領されていたためイタリアにいながら巡礼をするため作られたそうだ。この地域はいくつかのサクラモンテがありバラッロのサクラモンテはそのなかでも 最大だ。川に沿った町が見渡せる山の中腹にかわいいお堂がいくつか建つなかを散歩すると大きな教会もある。生活に追われ巡礼の旅がしたくてもできなかった庶民の祈りの道なのだろう。重機類もない15世紀、こんな山の中に建設を進めたその祈りの気持ちにおもわず頭を垂れる。サクラモンテ見学のあと、バラッロのまちでおそい夕食をとり充実した日をおえた。

サクロモンテのお堂の一つ ジオラマ サクロモンテから見たバラッロの町
山の中にお堂がたくさん建っている。 お堂の中のジオラマ。アダムとイブのシーン サクロモンテから見たバラッロの町

仕事のあとのお楽しみ その3 ミラノを一人で散歩

ロロピアーナからミラノに移動。帰りの飛行機まで1日あったのでミラノでひとり散歩。ミラノ有名な美術館、ブレラ、アンブロジアーナなどはなんども通ったが個人の邸宅美術館ポルディ・ペッツォーリ美術館Museo Poldi Pezzoli はまだ行った事がなかった。地図を見ながら探したらなんとモンテナポレオーネのすぐ近くで極めて便利なところにある。邸宅というので小さな美術館だと考えていたがなかなか大規模。裕福な貴族の美術収集家ボルディ・ペッツォーリの住宅・美術館で古い邸宅の2階、20部屋の展示室にポッライオーロ「若い貴婦人の肖像」やボッティチェッリ「聖母」などなかなか見応えがあった。古い懐中時計のコレクションも貴族の生活を想像させる。一階にある「武器の間」はおどろおどろしく、かつぐぐっとくるアートな空間だなあとおもっていたらこの部屋はイタリアの有名彫刻家のArnaldo Pomodoro氏がデザインしたそうだ。


美術館を見てからいつでも開店しているので便利なドウオモ前リナシェンテに行く。最上階を大きくリニューアルして、寿司バー、ジュースバー、ドウオモを見ながら飲めるラウンジ、モッツアレラバーなどができてとても楽しい。モッツアレラバーは好みのモッツアレラを選んで好みの料理にしてくれる。かりかりのパンの上にモッツアレラとトマトを乗せたのをたのみ赤ワインをいただく。ミラノの町をほろ酔いで歩くのも良いもんだ。3年以上かかっているドウオモの修復もほとんど終わり、美しい白い大理石の姿を見せている。14年前初めてミラノに着いてドウオモを初めて見た時暗い灰色の巨大建造物でなんだか怖かったのを良く覚えている。でもいまは白くて美しいゴシック建築だ。ブレラ美術館の周辺はオシャレな町で大好き。気温は25度前後でまだまだ暑くないので散歩も楽しい。そのあたりの店をひやかしてお土産を調達したりカフェに入ったり。町で知り合いの日本の友人3人に会いちょっとびっくり。なんて小さな世界!夜はいつも行くリストランテでステーキと赤ワインでひとりの夕食を楽しんだ。 上に戻る

ポルディペッツオーリ美術館前で 貴婦人のための懐中時計 「武器の間」
ポルディペッツオーリ美術館前で開館を待つ女性たち 貴婦人のための美しい懐中時計 「武器の間」西洋の鎧を着た騎士が剣をこちらに向けている。天井には現代彫刻があしらってある。

オーダーサロンタナカ 〒460-0003 名古屋市中区錦3-10-5 電話052-961-6401 定休日 水曜 営業時間10時より18時30分まで