日本では本来ピッツアであるピザとの重複を避けるためかピサと発音するが、イタリア人は母音で前後を囲まれた子音sは濁音となる。casa、家はカサではなくカーザとなる。従って正しくはピーザだが日本で表記に従おう。
関空から直行便でローマに着いた時は小雨が降り気温は涼しかった。そして次の日フィレンツェは雨の予報だったが薄曇り、摂氏二十五度でわたしが経験した夏では今まで一番快適だったかもしれない。そしてピサは快晴で温度計はグングン上がり困ってしまうくらい快晴だった。歩き疲れ汗もかいてピサ中央駅から乗り込んだのはミラノ行きの特急フレッチャビアンカ、赤から始まり、銀や白などいろんな色が登場するもんだと思いながらジェノヴァピアッツアプリンチパーレ駅へ二時間の電車旅。
はじめは右側にアルピ・アプアーネ州立公園の高い岩山が見えてきた。イタリア人はかなり高いところに家を作りたがるものだなあ、インフラはどう整備するんだろと思っていると長いトンネルに入った。暗闇をどれくらい走ったのだろうか一瞬、左に陽光きらめく海が見えた。あ。ティレニア海だと思ったらまた暗闇、でも時々トンネルが切れると海がみえるようになった。電車が走る海岸線は岩壁が続き、トンネルは海面から30mの高さで続いているため時々見える海は絶景で岸には水着の老若男女が見える。岩の景色がビーチになるとパラソルが立ちビーチチェアで日光浴をしている人がたくさん見えてくから、ここはリゾートなんだとわかった。海岸線にはずっとピンク色の集合住宅が建ち並び、これもリゾート客のためなのだろう。しばらくこういう光景が続くということはたぶん100kmにわたる長大なリゾートなのだろう。ジェノバまで続く長さを名古屋で言うと名古屋港から常滑、師崎まで知多半島全部ずーっとぜんぶリゾート地ということになる。ヨットが波を切って走るのが見えるし、観光客をのせた大型船舶も見える。トスカーナの境からフランス国境までをイタリアンリヴィエラというそうで車窓から見てきたジェノヴァから東をリヴィエラディレヴァンテと言うそうだ。名古屋に住んでこういう生活知らなかったなあ。列車からみた人びとは仕事をリタイアしてリゾートで暮らしているのだろうか。何から逃げてここ地中海で遊んでるのだろう?暑さ?寒さ?雑踏?日陰?ストレスかもしれない。私自身こういう生活に憧れるだろうか。いやまだまだだ。どんなことを思って一日を過ごすのだろうか。あるいは死を待ってか。そんなイメージを持つのはヴィスコンティの名作ヴェニスに死す、あるいはアランドロンの太陽がいっぱいを見たからか。
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列車から見えたイタリアンリヴィエラ
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古い街と海がマッチする。ポルトフィーノの近くか。

しばらくするとリゾート地の駅名の頭にジェノバがつくようになりジェノヴァの街が近づいたのがわかる。ジェノヴァは大きな駅がふたつある。ジェノヴァ・ブリニョーレ駅とジェノヴァ・ピアッツアプリンチペ駅。ピアッツアプリンチペ駅の前にはジェノバ出身といわれるコロンブス、イタリア語読みでクリストフォロコロンボの像が立つ。アメリカ大陸発見したといわれるが当時ヨーロッパ文明とはべつにアメリカ大陸ではすでにインカ帝国やインディオによる文明があったので発見というのは違う、ただの遭遇であるというのが定説となっているし、奴隷商人、悪名高きコンキスタドールの元祖、インディオの大量虐殺の事実も今となっては判明し、評価は別れる。

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ジェノヴァピアッツアプリンチペ駅前 コロンブス像とグランドホテルサボイア

今回はジェノヴァピアッツアプリンチペ駅前のグランドホテルサボイアに宿を決めた。ホテルはピンク色のだがしつらえ各所にアールヌーボーテイストでとても気に入った。宿に荷物を置いたあと、男会のメンバー高田さんに教えてもらったFINOLLOに出かける。行く前に地図でチェックはしておいた。でもジェノバに着いて急な坂に建設された街で坂道、トンネル、ケーブルカーが各所にあり平地をイメージすると地図はあまり役に立たない事がわかった。なのでタクシーでフィノッロに向かった。若いタクシー運転手にヴィアローマにあるメンズショップのフィノッロに行ってというと、あそこはメンズショップじゃない、ネクタイ店だとしっかり認知されていた。彼が言うのにはイタリアの首相もフィノッロのタイをしているとのこと。海沿いや古い街を過ぎ、街の真ん中にある10分ほどで着く。入り口にあるアールヌーボーというか曲がった植物の茎をモチーフにした看板が名店を物語る。クラシック極まる店内に入ってネクタイを買いたいがと尋ねると店主が重々しく、喜んでと答えた。どんなタイが良いと聞かれてプリントではなくジャガードか無地と答えるとネクタイの入った箱を出してくれた。それは店と同様にクラシックで一目で名品だということが分った。織りは優雅でそしてネクタイ自体の重さは重くない。セッテピエゲではないが随所に丁寧な縫製が光る。聞くとジェノバ市内であるラボラトリオつまり工房で仕立てているそうだ。ブランドでムダに値をつり上げている物を除外するとお値段はイタリアでも超高級ともいえる。でもそれだけの価値あるネクタイだったのでいくつか購入した。夕方だったので店主にこの近くに良いトラットリアはないかと質問したら、週に一度は通っているというとっておきの店サンカルロを教えてくれた。
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ジェノヴァ、いやイタリアの名店 フィノッロ
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フィノッロの店主 ルカ氏。まちがいなくジェントルマン。

ジェノヴァの中心は細い道がいりくんでいる。そんな小路にある若い店主が営むトラットリア、サンカルロにはフィノッロの店主ルカ・ブローニ氏みずから道案内していただいた。シンプルな内装のこぎれいな店内に一人座ると、店主がイタリア語ながら丁寧に説明してくれた。夏はやっぱり白ワインがいい。わたしがイタリア語はサンレモ出身の女性から習ったと言うとサンレモに近いリグーリア産のコクのある白を選んでくれたのでガス入り水と共に頼む。アンティパストは自家製アンチョビのフライ。アンチョビというと塩辛いと思っていたが手作りだから辛過ぎない。これをからりとフライにしてあり白ワインにピッタリ。二皿目は軽やかな野菜の詰め物。セコンドはもちろん現地ではペストと呼ぶジェノベーゼ。五月豆とジャガイモの茹でたのをコロッといれるのが現地風だそうだ。フィレンツェのアンドレア氏はパスタジェノベーゼはトラットリアによってあたりはずれがあるぞーと言っていたがこれは間違いなく当たりだと確信。そしてメインはバッカラつまりタラのソテー。ふんわり雪のような味だった。おいしい料理にスキップしながらホテルまでかえりたい気分だった。
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自家製アンチョビのフライ
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ジェノヴァではペスト、パスタジェノヴェーゼ
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タラのソテー
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トラットリア サンカルロのご主人
 

ジェノヴァは間違いなく大都会であるが空気は軽やかな潮の香りを含む。明けて次の日テラスで朝食をする事にした。男一人がテラスでたたずむのもなんだが、ビュッフェの材料で地中海風サラダなんかをこしらえカプチーノとともにいただくのもいい気分。この気分のままジェノバ市内を散歩。バルビ通りを下って王宮を見学。ヴィトリオエマニエーレ二世のイタリア統一以前、独立国だったジェノバの王宮は例に漏れず豪華。ジェノバで活躍したヴァンダイクの絵があり見る事が出来た。
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テラスで朝食を。日本の男独り。
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王宮でのバンダイクの絵、バルビの王女
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華麗な王宮の間でパチリ
そしてイタリア一の規模を誇るジェノバ水族館にも行く。お魚をながめてイタリアの半日をすごすなんて思っても見なかった。でもほんとうは2006年世界遺産となった大邸宅の通りストラーデ・ヌオーヴェとパラッツィ・デイ・ロッリに行くべきだった。でもまたジェノヴァには来よう。魅力ある街だとわかって、そしてここはミラノから約一時間で行けるのだから。
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ジェノヴァの街は古くこれより小さい通りが縦横に走る。
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船の向こうにクラシックな燈台
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水族館前
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コルベット広場から公園を見ると滝が落ちるのが見える。