ふだんは落ち着きはらった先生も駆け回る季節、12月がはじまった。今朝、母を連れて墓参とおもったがあいにく外は雨。あしたの朝こそ墓参に行こう。

昨日11月30日に見たヤフーのニュースで「エピファネイア4馬身差圧勝!スミヨン「本当に強い」」と競馬の記事があった。競馬はもとより競輪、オートレースのことは全く判らない。亡き父は麻雀の名人だったがわたしはからきしダメなドべたくそ。好きなゴルフでさえも絶対にぎらないという賭け事嫌いである。でもこのニュースが目にとびこんだのは馬の名前のせい。エピファネイアはイタリアの1月6日の祭日エピファニアのことだろう。

エピファニア=公現祭
公現祭(こうげんさい)は、西方教会(カトリック教会・聖公会・プロテスタント諸派)において、異邦への救い主(イエス・キリスト)の顕現を記念する祝日。カトリック教会で「主の公現」とも表記される。元は東方教会の祭りであり、主の洗礼を記念するものであった。4世紀に西方教会に伝わり、現在の公現祭(顕現日などとも)となったが、西方教会では主の洗礼の意味が失われ、幼子イエスへの東方の三博士の訪問と礼拝が記念の中心となり、異邦人に対する主の顕現として祝われるようになった。(wikipediaより抜粋)

イタリアには18年前ロロピアーナ社から日本のテーラーの代表のひとりとして招待を受けてはじめて行ったのだが、その旅がとてもよかったので次の年は妻を連れてイタリアにはじめての個人旅行をした。ローマについてすぐサンピエトロ広場に行ったらすぐ、なんと当時の法王ヨハネパウロ二世が窓からおでましになるという僥倖を味わったがそれからがいけなかった。わたしには分不相応なスペイン階段上の高級ホテル「ハスラー」を予約したのだがパスポートをミラノに忘れるというミスを犯し必死にフロント係にあやまってなんとかチェックイン。外国でホテルにチェックインの際にはパスポートがいるという事を知らなかったほど当時は愚かだった。それから階上の有名なルーフレストランを予約して行ったのだが、ジャケットは着ていったがネクタイ着用必須でそのときなんとカシミアのタートルネックセーターの上にカシミアのジャケットなら良いと踏んだのが間違い。入ることはできませんとカメリエーレから慇懃に言われた。それから午後7時過ぎのローマの街をネクタイを探して歩いたがすべての店がクローズ。あたりまえだ午後7時過ぎならすべての店は閉店ということは今になったらわかるがそのころのわれわれは呆然としながら偉大な街ローマを小一時間さまよい歩いた。曲がりくねった道に突然現れる偉大な建築物。ガイドブックを見ながらなら判ったかもしれないが当時のわれわれはあのパンテオンさえ知らないイノセントぶりで建物の由来もまったくもって判らなかった。当然ネクタイ屋など見つからず、妻は半泣きでダブルベッドでフテ寝。当然ルーフレストランには行けず、空腹のまま床に着き、耐えきれず食べたのが部屋の冷蔵庫にある缶のピーナッツという情けなさ、エレガントであるはすのローマ最高のホテル、ハスラーの夜がとんだ哀しい思い出になってしまった。

その次の日こそローマで楽しい一日になると思ったのが間違い。その日がまさに1月6日エピファニアの日だった。東方三博士といってもカトリックの信者以外はなにを言っているのかよくわからないと思うがキリストの誕生を予言し、誕生したキリストに贈り物を持って祝いに来た賢人たちだそうだ。そんな賢人たちがキリストに会いに来た日を祝うらしい。イタリア人にとって新年の大事な祭日で、クリスマスにはプレセピオというキリストの馬小屋での生誕シーンのジオラマを自宅や教会に飾りそれをエピファニアの日がすんだら片付けるという、なにか日本のひな祭りの飾りを3月3日がすんだらすぐ片付ける習慣にも似た風習もあるようだ。ホテルをチェックアウトすると祭日なのですべてのお店はお休みでまるでローマ全域シャッター街。どの通りを歩いても状況は同じで楽しみにしていたイタリアでの朝食やランチも食べられない。祭日なのでローマの街のひとどおりは多かった。そんななかで本屋さんとファーストフードの店は開いていて人で一杯。お腹がすいてしかたがないので、オートグリルというイタリア料理のファーストフード店にいって、人をかき分けながらプラスチックの皿とプラスチックのナイフフォークをつかって侘しい昼食をとった。
旅はいきあたりばったりだとろくなことはないということが身にしみて判った。周到な準備が必要だと悟ったのがこの時。その後インターネットなどで情報をていねいに探して旅の準備をするようなりこんな思いはしなくなった。その後は幸せな旅をなんどもしたがそれよりもこのときの事がいまでも鮮明な記憶として残っている、妻とも時々あのときはほんと大変だったねと思い出し笑いをすることも。
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サンピエトロ広場のまるで実際の家のような大プレセピオ。実際は机の上にちょこんと乗る程度のプレゼピオが一般的。