昨日、お客様がご来店される時間の合間を縫って、自転車で栄の丸善に行き、メンズファッション誌を物色。ピッティ・ウォモを直接見て今年の傾向は把握しているものの、雑誌でどうやって取り上げているか確かめたかったのだ。何冊かパラパラ見たのだがなんだかほとんど巻頭から末尾まですべてブランド、メーカーのコマーシャルに終始しているようですこしがっかりしながらそれでも一冊選んだ。
それで帰ろうとしたら書棚に一冊の写真集をみつけた。それは「SAPEURS」(サプール)。アフリカ、コンゴ首都ブラザビル郊外バコンゴに住みエレガントな衣服に身を包む男たちの記録だった。19世紀フランス統治の時代から、1980年台にフランスから戻ったコンゴ移民がもたらした「フランス的エレガンスへの憧れ」が原動力になり、衣服への強い情熱を傾ける男たちの写真集。極めて貧しい環境の中、長い年月をかけて貯金したすべてを衣服に費やし、独自の衣服観を展開する人々の姿は感動するしかなかった。その中の言葉を幾つか紹介しよう。
「ブランドは重要ではありません。自分のスタイルに合わせて衣服を選ぶ才能こそが最も大切なのです。」
「我々は生きている。衣服の中で、衣服とともに、衣服のために。」
「コンゴのサプールは三度の食事にありつけなくても幸せなのです。なぜならしかるべき服を着ることは精神を養い、身体を幸福で満たしてくれるから。」
「衣服をまとうにあたり、組み合わせる色を最大三色に抑えることが、完璧な美しさを生み出す。」
「神よ、永遠の父よ、あなたに近い姿を与えてくれたことに感謝します。」
「さあみんな、ラファ・ボンゼキに救いの手を。君の足元にはWestonの靴、首にはネクタイ。クールな着こなしもいいものだね。」
「サプール ザ ジェントルマン オブ バコンゴ 」 ダニエーレ・タマーニ著 発行 青幻社
今年ピッティ・ウォモで会った彼もそんな方かもしれない。グレーとラベンダーの2色で着こなしている。