今年の夏も厳しい暑さでした。9月になってやや雨模様の日も増えてきましたが、これでだんだん涼しくなれば、食欲の秋、芸術の秋、そしておしゃれの秋がやってきます。猛暑の8月はゴルフのラウンドも辛かったのですが、これから良い季節になるのが楽しみでしょうがありません。

9月いっぱいはジャケットなしでOKというゴルフ場も多いのですが、10月からはドレスコードでジャケット着用が必要になってきます。

いまカジュアル化がどんどん進んで、若い人たちの中には、どうしてカントリークラブに入るのにジャケットを着用しなければいけないのか、その理由がよくわからない人も多いはずです。

なぜゴルフ場でジャケットが必要なのか

ゴルフ場は一人で利用する場所ではありません。ゴルフクラブのメンバー、メンバー以外のゲストなど、一日に何十人もの人が利用する場所です。

ゴルフの上手い人、始めたばかりでまだ上手くない人、300ヤード近く飛ばす飛ばし屋さん、あまり飛ばない人、エンジョイゴルファー、競技志向のアスリートゴルファーなど、いろいろなスタイルの老若男女が、同じゴルフ場という一つのエリアの中でプレーします。

そこでは、上手いからといってオラオラと自己主張したり、遅い人に「どけどけ」とばかりに打ち込んだりするような、傍若無人な振る舞いは許されません。

建設にも日々の手入れにも、多くのお金と人の手がかかっているゴルフ場は一人のお客のための場所ではなく、その日にプレーしに来た全員が楽しむために存在します。したがって、他人を尊重し、ルールやマナーを守って紳士的に行動することがこの場所では求められます。

ゴルフ場のドレスコードもその延長線上で、いつもはアメカジやストリートファッションで身を固めている人も、ゴルフ場に入る際にはジャケットを羽織り、フロントのスタッフに笑顔で挨拶をして入場の署名をする。いわば、これは一つの「通過儀礼」です。

この通過儀礼をクリアすることで、「ゴルフ場の中ではルールを守り、他人を尊重するプレーヤーである」ということを、自分自身で「宣言」しているのです。

「どうして遊びに来たのに、こんな堅苦しいジャケットを着なくてはいけないのか」そう疑問に思う若い人も多いでしょう。しかし、ゴルフ場の「ジャケットを着用してください」というドレスコードには、単に服装を整えるということ以上の意味があるのだと私は思います。

「田中さんは洋服屋だから、ジャケットを売りたいのでこんなことを書いている」と思われるかもしれません。しかし、ここでジャケット着用を勧めているのは洋服屋としてというよりゴルフ愛好者として、ゴルフ場にはジャケットを着て来てほしいと願っています。それは決して、堅苦しい決まりを守るためだけではありません。ゴルフ場という一つの場所に集まった人たちが、お互いを尊重し、そこにいる全員が快適な時間をシェアする。

ジャケットを一枚羽織ることには、ゴルフというスポーツの文化のこころが込められています。カジュアル化がすすむ現代ですが服装を通じてその場所への敬意を示すという慣習を、残しておいてもいいのではないかと思うのです。

ジャケットを着てフロントで署名をするところからゴルフのプレーは始まります。
入場する際はプレーするゴルフウェアにジャケットを羽織って。この日はロロ・ピアーナのサマータイム
広い緑の大地で一日を過ごせる幸せを感じます。