当店でオーダーいただくとすべりが良くて吸湿性に優れている天然由来の原材料からできたキュプラをかならず裏地に使う。オプション料金は掛からない。だってせっかくのオーダーメイドにに強さはあるが蒸れやすい安物素材ポリエステルは使いたくないから。キュプラ裏地はドイツベンベルグ社がオリジナルなのでベンベルグともいうが日本では旭化成がつくっている。旭化成だから裏地の品番のあたまにAKがつく。当店でも多くの色を用意しているがそれでも飽き足らない方のためにフィレンツェの裏地の名店「MARIK」の裏地を追加料金3000円のオプションで用意している。マリックの裏地はまだまだ手縫いの文化が残っているイタリア・フィレンツェで腕利きサルト(テーラー)達に愛されている。

6月21日フィレンツェサンタマリアノヴェッラ駅に早朝着いてすぐに町の歴史的地区にある小さな裏地専門店マリックを訪ねた。マリックのお店は通りにある普通の建物だと思っていたが実は教会を改造したマリーノマリーニ美術館の建物のテナントで何回も通っているのに今回初めて気がついた。歴史的建物にもテナントがあるのがイタリアの面白いところ。電話もせずに突然訪問したがアンドレア店主夫妻はとても元気でうれしかった。冬に訪れた時、一年分をまとめて買ったのでまだ在庫はあるが少なくなってきたピンクなどいくつか追加した。そして価格は高いが(追加料金5000円)美しいマルチストライプの裏地も買い付けた。通常こういうマルチストライプの場合プリントだがこれは糸で染めたものを使っている美しい織物だ。数着分しかないがきっとおしゃれになると思う。

日本のテーラーの一部は織物会社のブランドネームが入った裏地が好きだがぼくはあれが嫌い。オーダーメイドのスーツはそんなブランドネームが裏地についていなくても使われた素材のドレープの美しさや、アイロンワークのラインの美しさでエレガントなスーツだということはすぐ分かるもの。スーツは「匿名の美」だと思う。ブランドネーム入りの裏地を使うくらいならぼくは素材中心に考えて旭化成のキュプラが実はトップブランドで最高だと思うしまたさらにマニアックに追求するならイタリアならではの色出しの美しいマリックのキュプラを使いたいのだ。ともあれ無難な色の裏地を選ぶ既製品に比べるとオーダーメイドの洋服はちょっと個性的な、派手な色を使う場合が多くお客様にとっても選択の楽しみとなっている。
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美しいマルチストライプ 
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今回追加した裏地 上から 鮮やかなグリーン、テラコッタ系、ピンク、濃いピンク、グレープ色
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マリック店主アンドレア氏と愛妻