火曜日は当店のすべてのスーツ、ジャケット、パンツ、コートの基本設計をしていただいている、日本最高のモデリスト柴山登光先生の講演会があった。先生はハンドメイドテーラーとしてキャリアの第一歩をはじめられ、大手縫製メーカー、そしてかってクラシカルなスーツとして一世を風靡したシャンタルデユオモ「エイボンハウス」の工場長として研鑽を積み、イタリアの洋服学校セコリの日本支部長として後進を指導されている。最近テーラーにあこがれる若者も増え、多くの服作りを志す若者が先生の門を叩く。またモデリストの日本第一人者として多くの有名セレクトショップの技術顧問という責任ある仕事で活躍されている。モデリストというのは非常に高度な技術知識を要求される仕事。洋服のパターンを縫製工場がパターン製作者が意図した通りに縫製するのを工程ごとに指導できなければモデリストとはいえない。例えば日本の縫製工場にヨーロッパブランドのパタンをそのままもちこめばヨーロッパの服になると思っている方もいるが実はそうではない。カッティングを終わったパーツをどこにどうやってイセをいれてどう縫うかなどモデリストの指導の上に服は完成度を高めて行くもので柴山先生は現在モデリストとして孤高の存在だ。
今回の先生の講演は2012夏ピッティウォモと2013冬ピッティウォモにおける紳士服のトレンドの総括が主な内容となった。トレンドというのはべつに本に書いてある訳でなくリアルにつくりだされるその年の服にそれとはなく表現されているもの。それをとらえるのはじつはとてもむずかしい。広いピッティウォモの会場を一社ずつブースをつぶさにみながら昨年までとの微妙な違いを見つけていく。先生は毎年ピッティウォモに通いながら「作り手」の立場で紳士服の流れを見つめてレポートされた。2012夏ピッティウォモと2013冬ピッティウォモはわたしも参加したので先生のお話がほんとうによく理解できた。
講演中の柴山先生と先生が設計されたローライズのパンツ。
講演会がおわったあと先生をお誘いしていっしょに食事におつきあいいただいた。とても寒い日だったので当店の近所の鶏の味噌鍋「楽」を考えていたが残念ながら席が取れなかったので高岳「奈可川」に行った。けっして手のこんだ料理ではないが素材のよさをシンプルに味わうこの店が好きでときどき行きたくなる。先生のなかなか聞けない貴重なお話を聞きながらの食事とお酒はことのほか楽しかった。
奈可川名物 桑焼き。しゃきしゃきのキャベツとともに。
可川でかならず食べる磯揚げ。しかしかえすがえすも肝サシがなくなったのは残念。自己責任で食べさせてほしいものだ。