今日は三月三日のひな祭りで、当家にも娘が一人いるので何日か前から妻が床の間にささやかではあるがひなまつりの準備をしていた。今日床の間を見るとおひなさまといっしょにおひな様の形のお餅が飾ってあった。これは丸の内にあるお菓子屋、野口屋さんで買って来た尾張地方に伝わるひなまつりのお餅「おこしもの」。押しもの呼ぶところもあるようで押して作るので押しもののほうがちゃんと製法を表現した言い方だとは思う。小さい頃からこれを食べていてお飾りが終わると火鉢であぶって焦げ目をつけたあと醤油をつけていただくのがこの時期の楽しみだった。ひな祭りの朝、外を散歩したがもうすっかり春の日差しで寒いながら歩いていて気持ちよかった。きょうは新聞で麻生副首相のことを読んだのでそのことを書いてみよう。
当家のおひなさま。木目込み人形
名古屋市丸の内3丁目野口屋謹製の「おこしもの」
麻生太郎副首相のスーツ姿がすばらしいのは衆目の一致するところ。麻生さんのスーツのディテールひとつひとつにについては論じることもできないがそのスーツの醸し出す雰囲気、いまの言葉で言うとオーラとでもいうのか、それはまちがいなくワールドクラスで各国首脳のスーツスタイルの間に立っても高いレベル。麻生さんのおかげで日本の服飾文化の高さが世界で再評価されたことだろう。どんなテーラーが仕立てているのかは良く知らないがまたそういう店の名前がなかなかでてこないというのも奥ゆかしい。テーラーとは匿名であるべきで、あそこの店は有名人誰々が仕立てましたとちょうちん記事ではやし立てるマスコミを背に向けて、顧客の声を聞き服に対峙するテーラーの姿がかいまみえる。その服にすべてが表現されているからというのが英国紳士服の思想だとおもうがそれに全く合致している。麻生副首相の服を見てギャングなどと揶揄する人もいる。しかしウェルドレッサーがそういう批判を浴びるというのも世の常。男と生まれたからには女々しく服などに気にせずにバンカラに、ぼろは着てても心は錦で人々のために良い政治をするのが理想というのも分るが、ラメやサテンの服を着ている訳でもあるまいし落ち着いた英国伝統的な服に身を包んだくらいでギャングなどとからかうのはのは野暮というもの。麻生副首相の服は服地の上質感も感じ、仕立ての良さはすぐわかる。麻生太郎さんのような洋服を作ってといわれてもそれは無理でスーツには「歴史」が必要となる。和製チャーチルといわれた吉田茂を祖父にもち、当然祖父を通して英国文化から影響をうけたはず。またずっと同じテーラーで続けて誂え、テーラーも顧客の要望を入れながら仕立ててきた「歴史」がその服に垣間見える。スーツはそれ単体ではなく、コーディネイト、着こなし、身のこなし、そしていかに洋服を大切にしているか、そしてその年月がスーツスタイルに表現されている。わたしもスーツを愛する人たちのために、その方々の人生がスーツスタイルに豊かに表現されるようにこの仕事を続けて行きたいと麻生さんの服を見ながら思っている。