オルビエートを後にして電車を二度乗り継ぎナポリに向かう。ローマテルミニ駅で特急フレッチャロッサにちゃんと乗り継ぎができるかヒヤヒヤしたがなんとか無事に乗り継ぎも出来て定刻にナポリ到着、ナポリは以前駅が古く着いた瞬間治安の悪さを感じたものだが今はモダンな駅に変貌を遂げた。ホテルに向かうタクシーに乗ると運転手のあんちゃんはいきなりメーターを倒さず値段交渉ときた。運転極めて荒く、ホテルから離れた場所に降ろされる。あーあ我がナポリよと思い、のどかな田舎町オルビエートの静寂を懐かしんだ。治安が悪いとさんざイタリア人にも吹き込まれたため身を硬くしてやっとの思いで今夜のホテル La cilliegina lifestile hotelに入る。
ホテルは安全な三階にあり極めて清潔でモダン、それにホッとしながら気分を変えて、街に生まれ酸いも甘いもかみ分けた本来の自分にもどりナポリの混沌に向かう。小さなオルビエートは雑貨屋やワイン屋が目についたが、それより市街地がはるかに巨大なナポリは洋服関係が圧倒的に多い。有名サルト、ルビナッチあたりを頂点としてファストファッションに至るまで巨大なおしゃれヒエラルキーがここに形成されている。着倒れ兼食い倒れとも言うべきかいまや世界に冠たるナポリメイドもそんなナポリっ子の洋服好きが支えている。美しいプレビシート広場の一本脇から出ているキアイア通りから続く地域がナポリのエレガントゾーン。ひとりの洋服好きとしてワクワクしてしまう。
話はそれるが今回の旅の前、二度ほどイタリア語教師のナディアと会って話す機会があり、そのせいか今までより滑らかにイタリア語を使える気がする。例えば このあたりで靴下の店GALLOを見つけて入り短い靴下を探していると尋ねると客の五人のイタリア人女から総攻撃に遭った。「あんたらどっからきたの?どえりゃーいなかもんだねー!おしゃれななナポリっ子はカンペキ全員ホーズをはいとるのしらんでしょう?」ぼく「おしゃれを勉強しにわざわざナポリくんだりまで来とるぼくがそんな事知らんわけにゃーでしょう。今は時代が変わってオトコのパンタローネ(注ズボン)がでら細なったんだわあ。だで長靴下履くとだんだんずりあがってしまうんだわー。あんた知らんのー。遅れとるねー!」と逆襲を試みた。マンマたちは口々にそんなことにゃーわ、とおっしゃっていたが風変わりなイタリア語を話す日本人との会話を楽しんでくれたのか店を出るときには、またこやーといっぱいの笑顔で挨拶してくれた。しかしながら今日のナポリの気温18度近いのにこの地の男たちがホーズを履き続けているのは驚きでもあった。
その後アットリー二さんのお店にも表敬訪問したりフィナモレでステキなチーフを選んだり、エディモネッティさんでナポリ好みを探したりしていたら夜も更けて、お腹もすいてきてナポリ名物の海の幸が食べたくなってきた。
チェーザレアットリー二のヴェットリーナ