朝起きてホテルの屋上にあるテラスでヴェスヴィオを見ながら朝食。オレンジを絞った生ジューススプレムータとナポリのチーズ、塩づけしたオリーブの実だけの簡素な食事が体に優しい。
通りの真ん中から出ているフニコラーレチェントラーレ(ケーブルカー)に乗ってナポリの高台地区に出かけた。このフニコラーレは観光用ではなくまさに市民の足。1300mの距離を高さを160m登り、途中に駅は二つある。途中は景色が良いわけでなくほとんどすべてトンネルとなっている。終点に着いたら普通の市街地が広がっていた。
どこに行ったらいいかわからないのでなんとはなしにセントエルモ城に向かう。この時点でセントエルモ城についての予備知識はゼロ。看板の矢印に従って階段を上って、市街地を不安な気持ちで歩くこと15分セントエルモ城に着く。石造りの高い壁がそり立つ砦だった。ひと気がないが入場券売り場で5ユーロ払って入り口に向かう。こんな高い城登るのは骨が折れるなあと思ったらアッシェンソーレの文字が見えた。それはエレベーターのことで、迷わず乗って登る。登ったら兵士のための広場があり周りの城壁が高くて景色が見えない。でも上る階段を見つけて登りました。
突然、目の前に広がる景色に息が止まりそうになった。幸運にも晴れて澄んだ空気の中ナポリのエレメント全てが同時に目に入り頭の中がバーストしそうになった。ヴェスヴィオ火山、古い教会が幾つか見えるナポリの街、巨大なクルージングの船が浮かぶ港、そして半島のシルエットの向こうはアマルフィ。カプリ島も見える。私は今までかって56年の人生を振り返ってこんな美しい景色を見たことがあるのだろうか。もちろん日本にも素晴らしい場所がたくさんある。でもそれでこんな気持ちになった経験はない。見た瞬間に心臓に矢を放たれる心持ち。ひとりでこんな景色を見るのはもったいない限りだが、ひとりで見たから強い衝撃があったのかもしれない。ナポリを見て死ね、この言葉の意味を一瞬で理解した朝だった。
景色は現実か夢か?
山上の高い砦セントエルモ城
ナポリフニコラーレチェントラーレ