先週の水曜日で震災から丸10年が経過しました。3650日の時間は決して軽くありません。

10年前わたしは52才でした。震災の日は、ちょうど名古屋の服地組合の会合があった日でした。すでに当時の会長と監事は故人となっています。春素材のオーダーの季節でしたが、その日テレビで流れる泥海に街が飲み込まれる悲惨な津波の映像を見ていて、いたたまれないきもちになりました。洋服屋というのがこんな事態にいかに無力かを痛感しました。幸せな空気が満ちている時は輝いてみえるテーラーだったかもしれませんが、震災のような難局にはなにもなすすべはなくどうしようもありません。ただただ呆然と虚空を見て考え込む時間が続いたことを思い出しています。そして原子力発電所が津波で破壊されたことが伝わり、その収束がまったく見えないときは、もう日本は終わりになるかもと震え、ただただ一心に神仏に手を合わせることしかなかったことも忘れられません。どうすればいいか考え抜いてFORZA JAPAN(がんばれ日本)と名付け、売上のなかからまとまった金額を震災に遭った市町村に送りました。そんなわずかなことしかできず忸怩たる思いをずっといだいていました。

10年前のブログを見ると、きんぼし名駅店が開店したとの記事がありました。しかしキャッスルプラザホテルの建て替えに伴い、残念なことに名駅店は本日閉店となります。ビルの建て替えがあることはは10年前の開店のときからわかっていたことですが、みなさまに可愛がられ、人気のあった店なので残念ではあります。しかし今月、名古屋市藤が丘にあたらしい炭火焼き鳥きんぼし開店します。それがちょっと楽しみ。

10年ことなきを得たことはなによりも幸せ。

名古屋は東南海地震があるとひとたまりもないと言われています。ただ東北関東大震災から10年が経ちましたがこの地区にひどい自然災害はありませんでした。そしてほんとうにおかげさまで我々の家族も健康にめぐまれた10年だといえます。テーラーのしごともずっと続けていられることはお客様、取引先、縫製工場、われわれの周りのひとびと、神仏に感謝の気持ちだけです。

店内で25年間、時を刻み続けるドイツ製振り子時計