オーダーコート先行受注会開催のおしらせ

おしらせした通り今週末7月3日から、オーダーコート先行受注会を開催いたします。ピアチェンツァ100%ベビーキャメル「DUNES」、ロロピアーナウール100%「CAPOLAVORO」、エルメネジルド・ゼニアコート素材など素晴らしいコート専用素材からお選びいただけます。基本的にシンプルなチェスタフィールド、ステンカラーがおすすめですがバルマカーン、ポロコートも可能となりました。

ローマ篇

開催中のピッティイマジネウォモに行けない代わりに4日に渡って書きました「初めてイタリアに行った冬」も今日が完結編です。

ローマから、ロロピアーナの本社があるビエッラ、ヴェネチア、フィレンツェの後、テーラー一行は最終目的地、ローマに着きました。ずっとその街の最高クラスのクラシックホテルにロロピアーナ社は宿泊場所として設定しましたが、ローマも共和国広場近くにある「グランドホテルローマ」という格式あるホテル。

ローマの空はただ青く

ここで2泊しましたが二日目の昼間はロロピアーナ社のカンファレンスがありました。まずここでロロピアーナ社から発表されたことは当時スーパー100だったタスマニアンをスーパー130にアップグレードするニュース。そしてロロピアーナ社のすべての素材をグレードアップすることでした。その発表をするロロピアーナのスタッフの誇りに満ちた表情をわすれることはできません。スーツ服地の世界を一変したといういわれるロロピアーナタスマニアンはその後スーパー150にグレードアップし、そして今年ついにタスマニアンはスーパー170という高みに登りつめました。さきがけとなったのが1996年のこの「ムーブメント」です。

そしてそのあとは商談会。テーラーがグループごとにまとめての商談でしたが、当時から比較的買付数量が多かった当店は別に個室で行いました。当時日本代表だったルカ・ガスタルディ氏(のちに欧州ブルックスブラザーズCEO)は貴店で更にシェアを伸ばすためにはどうしたらいいと聞かれました。わたしはその意味が理解できず、もっといいものづくりを目指すなどと答えましたが、日本人わたしの行っていることがわからないのかとルカ氏も困った顔をしていました。何度も説明してもらい解った彼の言った意味は、ウチの素材を今どれだけ買うんだ?ということでした。そのときルカは戦略的価格を提示してきたので、あとさき考えず、ロロピアーナと一蓮托生だとハラをくくってかなり量をまとめて買付けました。今考えると、父なきあとバイヤーとしてのわたしの出発点がこの日だったのでしょう。この受注会で買ったロロピアーナ素材は帰国後、お客様に大変喜ばれ、短い時間で完売いたしました。

当時ロロピアーナ社日本代表、イケメンのルカ氏
ロロピアーナ社開催の晩餐会にて

ローマではフォロ・ロマーノ、コロッセオなど観光しましたがどうしても忘れられないのが一人で歩いたカトリックの総本山サン・ピエトロ大聖堂。ベルニーニが手掛けたバロック彫刻はすばらしかったのですが、イタリア旅行でもっとも心を動かした瞬間は突然おとずれました。

ミケランジェロの最高傑作「ピエタ」がさりげなく目の前においてありました。今はテロ対策でセキュリティも厳重にガラスで囲ってある人類の宝でもある「ピエタ」ですが幸運にもそのときは今ほどのガードではありませんでした。その現実を超えたリアルさをもつ大理石の彫像は十字架からおろしたキリストの亡骸を抱く聖母マリア。マリアの手は、ぐったりしたキリストの脇腹に食い込んでいます。あまりに強いイメージに、目の前にある大理石のキリストが2ヶ月前になくなった父親の亡骸に見えてしまいました。突然父の思い出があふれてきました。そのときのわたし涙をこらえることもせず「ピエタ」の前にしばしたたずみました。

サン・ピエトロ寺院にて38歳のわたし

長い旅をおえて父のいない店にもどり、父の残したオーダーサロンタナカをしっかりやらなければと心に誓ったものでした。38歳のわたし、若かったなあ。