やはり先週のことがまだ頭から離れません。でも乗り越えて頑張りたいし、日本人も前を向いて歩を進めてほしいと思っています。
これ以上イヤなことが起こるのも困るので、自室の奥に厄払いの意味で「魔除け」を設置しました。その絵「聖女ルチアの埋葬」はカラヴァッジョの中でもちょっと陰惨な、処刑された聖女ルチアを埋葬する絵です。この絵をその地で採れた植物パピルスで漉いた紙に印刷したシートを名古屋納屋橋高山額縁で額装してもらいました。小さいこどもならコワイーと泣いちゃうかもしれません。悪い「気」も遠ざかってくれるのを願って。
もう3年前になりますか、2019年6月にピッティイマジネウォモを見てから、カラヴァッジョを見るためシチリア島まで出かけました。シチリア最大の空港カターニャに降りて、小雨降る中、2枚の名作がある海峡の街、メッシーナに向かいました。その後、タオルミーナで一泊してこの絵があるシラクーサに走りました。
シラクーサに着いたときは雨は止んだばかりで地面は濡れていました。宿に着いてすぐ向かったのはこの絵が祭壇に鎮座する聖堂です。かつてはギリシャに属し、アルキメデスが活躍した街でもしられるシラクーサ、街は海に小さな半島が飛びてでいて川のような海路でへだてた先がオルティージャ島。中心街と歴史的地区はオルティージャ島にあり、一番大きい広場の片隅にあるのがサンタルチア・デッラ・バディア礼拝堂です。
礼拝堂が閉まるのが午後3時、その前の1時50分に中に入りました。この絵がこの礼拝堂のいわばご神体です。写真撮影は禁止で厳かな空気が満ちた礼拝堂の奥に鎮座するこの絵をじっと眺めていました。カラヴァッジョの残酷な絵はマルタ島にある、聖ヨハネの処刑などはいくつかあります。でもこれらは不思議な静謐さをたたえその場に存在します。いまでもこの絵の持つ崇高な雰囲気は記憶に残っています。
礼拝堂に入るのは無料なんですが、その礼拝堂を後にする際、ドネーションの受付があったので、たった10ユーロですがお供えしました。日本からシチリアまで無事行くことができて、幸運にもこの絵を見ることができる感謝の気持ちをささやかにこめて。
その際にこのパピルスの写しをいただきました。日本に帰った後、絵が絵だけに粗末にするわけにいかずずっと持っていましたが、3年経過し魔除けとして額装するに至りました。