今朝、母親の部屋のテレビでNHKの朝の連ドラ「ごちそうさん」が流れていた。わたしは連続ドラマを見る習慣は無いが母は毎日見るのを楽しみにしているようだ。なにげなくながめていたところその舞台は関東大震災直後の大阪だということは判った。おくどに着物姿の女性が立ち食事を作っていたシーンから会社の事務所のシーンに移ったところでわたしはちょっとぎょっとした。そのシーン、事務所で働く若い男性達は間違いなく大正、昭和初期のスーツではなく今風の仕立てで最近の素材でできた平成の世の今の服を着ていたのに気がついたからだ。時代劇の主役の耳にピアスの穴でも発見したかのような興ざめな気分を味わい、きょうびのNHKは時代考証がなっていないなあとちょっと憤慨。でもそんな事に気が付くのも僕が洋服屋だからなんだとあらためて思い直してみた。いつも自分の店、他の店で仕立てた服かどうかに関わらずその素材感、仕立て、ディテールなどジャケットスーツの姿を見つめている。毎年イタリアに出かけるのも結局のところ服を見るためだ。昭和初期の設定のドラマに平成仕立てのスーツを着ているとしてもそんなことに気がつく人はわずかしかいないはずでいくらNHKでもコストに制限のある中でお金のかかる時代考証に正確に沿った衣装なんかできるはずもない。洋服屋を35年続けて来て養われた眼があるからこそ時代ごとのテイスト判ってしまんだなと納得した。
昨日の夜、クリスマス準備のためか連休のためか栄の街はとてもにぎわっていて我が家もたまにはみんなそろってショッピングにでも行こうかとおばあちゃんから娘まで歩いて栄を散歩した。ラシック、ザラ、パルコなどをのぞいて洋服を物色、そしてみんなその味を気に入っている矢場町の上海湯包小館で夕食をいただく。おなかがいっぱいになり、紹興酒の酔いも加わった。店をでて時計を見ると8時半、まだパルコ南館一階のビームスはやっていたので入る。娘はおしゃれに興味がありひさしぶりに入るセレクトショップにおおはしゃぎで、やっぱりビームスはおしゃれだわとかいっている。母はあまりこういう場所にではいりするのことは無いのでものめずらしいのかきょろきょろしていたがやがて濃紺でそめたシープレザー風のアウターを見つけた。着たり脱いだりしているうちに決して高くないので買う事になった。レジをしている間、男物のコーナーをみていたらスタッフの方に、テーラーの田中さんじゃないですかと声をかけられた。彼の担当のお客様がよく当店でオーダーされるそうでぼくの店の事が話にでるそうだ。そのとき着ていた服がヘリンボーンのジャケットをラバットツイードのジレに重ねていてちょっと凝ったスタイルだから見つけられたのかもしれない。彼もやはり服を見る眼のある人なのだ。
クリスマス前の栄、広小路通にはハーレーに乗ったサンタさんが。本文に関係なし。
今日の朝方は来るお客様もないだろうと矢場町の「アビアント」に髪を切りにいったらお客さんが来たから帰って来てと電話がかかった。自転車をとばして急いで帰ったら大好きな街、越前大野からわざわざいらっしゃったお客様だった。この方も洋服が大好きな方、サンプルのジャケットをいくつか着てひとつずつディテールを決めていった。そんなオーダーする時間そのものが楽しそうでこの方は洋服業界ではないが洋服を見る眼があるかただなと思った。この方とまた来年には友達である洋服好きの男達と集まって飲もうと約束を交わした。そんな男達の中でちょっとしたブームなのはその時履いている靴を写真に写しネットで公開すること。ぼくともうひとかたと三人で撮った写真がこちら。