「僭越」自分の地位や立場を越えて出過ぎたことをすること。

日本ではウインザーノットという締め方がネクタイが緩みにくいためかこの締め方をしている方をよく見る。 英国王室の王位を捨てて恋に生きた英国王エドワード8世ウインザー公の名前がついている。ウインザー公はとてもダンディで現代スーツを確立したのがウインザー公ともいわれる。この巻き方はウインザー公の名前がついているのでウインザー公はこの巻き方だったと思われているがウインザー公本人が回想録『家族のアルバム』でわたしがこの巻き方をしたことはないと否定しているそうだ。 わたしはその回想録を入手していないので確認はとっていないが複数の資料にそう記述してあった。
edword8
他サイトから画像をお借りしました。やはりウインザーノットではありません。

日本の服飾のハウツー本、指導書をみるとウインザーノット、セミウインザー、プレーンノット、ダブルブレーンノットなどを並列して書いてあるが
ほとんどその優劣についてはほのめかしてはいるがハッキリは言及していない。あの故落合雅勝さんの本でもはっきり書いていない。
しかし一冊だけ「スーツの適齢期」片瀬平太著にはオーバー50代を今日的に見せる着こなし術としてプレーンノットを奨めている。わたしはずっと2回巻の
プレーンノット、ダブルプレーンノットだ。このネクタイの結び方にについてずっと以下のことに気がついていた。

  • おしゃれに敏感な人はすべてプレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットをしている。
  • 紳士服飾雑誌の写真はすべてすべてプレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットをしている。

プレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットを上手にしめると縦長の樽型に仕上がる。「上手に」と書いたが習熟が必要でネクタイによってもうまくディンプルができてきれいな縦長樽型になる場合とうまく出できない場合がある。また緩みやすくできたディンプルもほどけやすい。それに対してウインザーノットはすぐ習得でき簡単にシンメトリカルな三角形ができディンプルも作りやすいし1日ネクタイの形が崩れにくい。利便性の上からはウインザーノットのほうが優位かもしれない。でも一番の問題はそれがどういうわけか逆の台形でおにぎりかカマキリの顔の形にも似て美しくない。

締めやすさ、ほどけにくさはウインザーだが、美しいのはまちがいなくプレーンノット、ダブルプレーンノット。
でどちらを選ぶべきか。やはり人間の身体の中心で顔のすぐ下に位置するネクタイの結び目は「美しい事が絶対条件」と私は考える。だからプレーンノットか2回巻くダブルプレーンノットを選ぶのが正解

同年代の友人で服にくわしい男がいる。二日前彼にウインザーノットってどう思うと聞いたら彼は若いときにバイトしたメンズショップの店主に教えられて以来プレーンノットしかしていないと言っていた。彼はウインザーノットはシンメトリカルつまり左右対称、プレーンノットはアンシンメトリカルというか左右が歪んでいてその自然な感じが重要なのだと語った。なるほどたしかにプレーンノットは縦長の樽型の美しさもあるがそのイガみから生じるオートマティックでないマニュアル感があり自然な美がある。

スーツを着ている人は基本的に「場」を重んじ、おだやかで正しい生き方をしている。そんなスーツをきちっと着ているかたのネクタイの締め方をうんぬんするのははなはだ恐縮であり僭越だと思っている。直接スーツ紳士にネクタイの締め方について文句をつけることなんて私には出来ない。しかしオーダースーツを販売する仕事に従事しているという事は美しいスーツスタイルを紹介し、顧客に美しいスーツを着ていただく責務がある。失礼なことを言うのも罪だが、言わないのも罪だと思う。
だから直接は申し上げることはできないがこのブログでおずおずと申し上げたい。

スーツを美しく着るためにウインザーノットはやめてプレーンノットかダブルプレーンノットでネクタイを締めてください。

DSCN6170
 左がウインザーノット 右がダブルプレーンノット