当店には時々オーダー初めてなんですがというお客様が来店いただく。本当にありがたいことで、オーダースーツのお店はやはり敷居が高いのでなかなか入店されるだけでも勇気がいるだろう。ようこそご来店いただいたと心から感謝している。お客様にとり人生最初のオーダーメイドなのでできるだけ失敗がなく、オーダーしてよかったなという感動を味わってもらいたい。良いオーダー体験になるためすこしだけアドバイスをしてみたい。
わたしの失敗から。
大学3年のとき初めて両親にスーツを作ってもらった。 そのスーツはベージュのギャバジンの無地でパッチポケット、七宝調のメタルボタンが付いていた。ベージュという色はたぶん紳士服全体のなかでも3%くらいしか無い色だろう。またふんわりしたフランネルならまだしも表面感のつるっとしたギャバジンだ。若い男が着ていると周囲の人は間違いなく違和感を感じるはず。さらに悪かったのは脇がアウトポケットでメタルボタンというジャケット仕様だったのにスーツで仕立てた事。へんな夢とイメージにとらわれ服地と仕様を決めたすべて私のミス。数回しか着ずもったいないことになってしまった。お客様にはそんながっかりな経験はしてほしくない。
なるべくオーソッドクスな服地を選ぶ。
20代前半ならチャコールグレー、ミディアムグレーなどまず無地の中から選択するのがいい。若い方は若いというだけで十分スーツは映える。太幅のストライプを着こなすには人生の年輪が必要となる。まずダークスーツに慣れてからそれからストライプにいく、それが王道。無地でもサイジングをしっかりしたフィットしたものを着ているのでダークな無地でもオーダーの良さをあじわえる。もし初めてのオーダーが28才をすぎていたら最初のオーダーでもストライブを選んだとしても問題ない。まず1cm程度の幅のペンシルストライプ、チョークストライプ、ピンストライプあたりからはじめるのがいい。
ディテールは控えめに。
オーダーの場合、多種のディテールから選ぶ事ができて指示さえすればなんでも出来てしまう。それを試してみたいという気分になるのもわかる。でも最初のオーダーなら長いスーツの歴史の中で生き残って来たシンプルなディテールであるシングル二つボタンセンターベンツまたはシングル3つボタンサイドベンツにするべき。ボタンホールの色を変えるとかそういうことはとりあえず最初はするべきではない。オーソドックスなものからオーダーの歴史をはじめるのがいい。
サイジングは大胆に
細身のシャープなラインは大胆なサイジングから生まれる。やはりこの部分はオーダーが初めての方でもしっかり要望を伝えてほしい。おまかせですということならテーラーも冒険が出来ず中庸なサイジングになってしまう。どんなラインが好みかは採寸する人間も初対面の方なら当然わからないのでちゃんと相談するべきだ。
20代前半ならこんな素材からはじめる。 左から カノニコ(59800)エルメネジルドゼニアエレクタ(75000)ドーメルアマデウス(82000)コメロサキソニー(59800) カッコは税込オーダースーツ価格。クリックして拡大してご覧ください。
28才あたりからはこんなストライプからはじめるのもいい。左からロロピアーナフランネル(85000)ロロピアーナ(79800)ロロピアーナ(79800)カッコは税込オーダースーツ価格。クリックして拡大してご覧ください。