年内納品も完了し当店も落ち着いた時間を過ごしている。昨日は東京で私どものスーツ、ジャケット、パンツ、コートのパターンを製作いただいている日本を代表するモデリスト柴山登光先生にクラシックスーツについてお話を拝聴するという貴重な経験をした。
クラシックスーツの道一筋に研鑽を重ねて来られて来たマエストロ、柴山先生から直接聞く話は一言一言、洋服屋のわたしの血となり肉となる。まずサイジングについての私の見解についてご相談して、英国の洋服製作とイタリアの洋服作りの違い、洋服を掛ける人台についての考察などお聞きしたがとても感銘を受けたのが以前先生が在籍されていたエイボンハウスの工場で作って来た服の変遷についてだった。エイボンハウスはかってトラディショナルをベースにブリティッシュテイストを加えた服作りをめざしていた。当時雑誌MEN`S CLUBの巻頭数ページ目にかならずエイボンハウスは見開き広告を展開していたのだが先生はその広告を切り抜いて一冊の本にまとめていらっしゃってそれを見せていただいた。オーセンティックな服作りのメーカーだと思い込んでいたがずいぶん服の表情が10年20年の年月で見ると変化して行くのに驚いた。高い位置の3つボタンで裾の長いスーツやアルマーニ風ソフトスーツと思われるのもあった。とはいえ常に当時でもピッティウオモなどクラシックスタイルに準拠してエイボンハウス独自のものではなかったとのこと。やはりわれわれはクラシックスタイルとは「変わらないもの」と説明はするが10年単位の月日には抗えないもので氷河のように流れていないようでじつはゆっくり姿を変えて行くものかもしれない。
柴山登光先生製作のパターンを使用したスーツとコート、先生と私。
お話ししてから先生に昼食にステーキハウスたつみ亭でハンバーグをごちそうしていただいた。ガーリックバターの乗ったミディアムレアのハンバーグはいままで食べたこのない美味しさだった。
切るとなかから
先生のスタジオのそうとおくない場所に西新井大師として有名な「総持寺」があり先生にご案内いただいた。東京では初詣にたくさんの人が訪れる場所として有名との事。ここはスギハラが住職をしている知多妙楽寺と宗派が同じ真言宗豊山派で、豊山というのは豊山派の総本山、奈良の長谷寺の山号で牡丹園があったり参道に草もちが売っていたり微妙に似ているのが興味深い。総持寺参詣のため西新井駅から単線、その名も「大師線」が引かれている事を見ると古くから多くの人の崇敬を得ているのだろう。
参道には長谷寺とおなじく草だんご
総持寺の西に井戸が湧いたため西新井というそうだ。