35度を超える気温で本当にスーツを着ることができる秋がくるのかすこし不安になりながら台風のせいとはいえひさしぶりの慈雨をよろこぶ朝。
以前ブログに書いた小田島雄志先生の日本経済新聞「私の履歴書」が今日で17回目になるのだが期待通りとても楽しい。 小田島先生のシェイクスピアにはちょっとした思い出がある。
わたしが大学4年生の春、今の店の前身である田中商事(それ以前は田中羅紗店と言った)がテーラーさん向けの服地卸商からオーダーの洋服屋に商売替えをすることとなった。従業員さんを10人以上かかえ服地だけで商売するのがなりたたなくなったから。リストラをともなうため息子のわたしだけがのほほんと関東で大学に通うわけにはいかない。東京、根津の伊丹嘉之先生のもとで製図、裁断など洋服の修行をしたのち大学を辞めることとなった。夏の間、東大阪のランクロージングの工場で学びその年の9月からオーダーサロンタナカにデビューとなった 。
部屋の本棚に眠るシェイクスピア全集
父からもらったのは手取り3万円の給料。大学を辞めたあとアカデミックな世界への強い郷愁があり、少ない給料のなかから毎月一冊ずつ、当時刊行されたばかりの小田島先生によって現代語訳された「シェイクスピア全集」を東区の杉山書店から買い求めていった。買ったと言っても読んだのはマクベスとハムレットを流し読んだくらいで30年経ってもまだほとんど読んでいない。昨年夏ロンドンに妻と娘とともに行きテートギャラリーに現代アートを見に行った際、そのとなりにグローブ座を再現した劇場があった。そこで聞くと日本語版のオーディオガイドはないとのこと。ああしまった、もし小田島シェイクスピアを熟読していたら原語のシェイクスピアも楽しむ事ができたのにと後悔し、グローブ座には入ることはなかった。
小田島先生の「私の履歴書」を読みながら本棚に眠っているシェイクスピア全集があることをおもいだし、いつか夏の日がな、ゆっくり戯曲を読もうかなと思う。 あれから30年経ち老眼鏡がいる今。