母親が家の中を整理して昔の旧社名を白抜きで名入れした風呂敷がでてきた。旧社名は田中羅紗店で昭和43年に田中商事株式会社と名前を変えた。私がオーダーサロンタナカに入る前、羅紗つまり紳士服地をテーラーさんに売る問屋だった。お正月には店で初売りを催し当時は多かった名古屋周辺のテーラーさんを集めた。昼食も自家製のとんかつと赤出しを振る舞い店の番頭さんはなじみのテーラーさんと麻雀をしながら接客していた。その風呂敷はその際におみやげとして誂えたもので今なら「ノベルティ」。当時は中国製などなく木綿を染め抜いたものでなかなかしっかりしていて味わいのある素材感。テーラーさんは紳士服地を風呂敷に包んで顧客のところへ自転車やバイクで注文を取りに行く。だから名入れの風呂敷は意味が有るというわけ。
このマークは父が洋服の原料である羊をイメージしてデザインしたもの。田中をT.N.Kと表記するのも昭和を感じる。
渋い濃いグリーン色の風呂敷。父がこのマークをデザインしたときの事を思い出す。
そういえば今はほとんどすべて店頭でスーツジャケットのオーダーを受け付けているがわたしが20代30代の頃は外販のためしばしばお客様のお宅や職場に伺ったり遠くの町に出張した。でもぼくは風呂敷に包んで持って行くのは呉服屋さんのようでなんか抵抗があり服地専用のバッグをオーダーしてそれに服地、夏素材なら12着、冬素材はかさばるため10着入れてお客様のところに伺ったものだ。
お客さんのところに訪問するときもっていった風呂敷の代わりの服地入れ。