冬は旅に出たくなる。寒い街に行きたくなる。
この秋冬忙しい日々を過ごした。年内納品の受注も完了した12月のお休みにはどこか行きたいと思い地図を見ながら未だ行ったことのない秋田、高知、松山へと考えたが、宍道湖、中海という二つの湖の真ん中に位置しずっと行きたかった町、松江に行くことにした。青春18切符でいつも行きたいと思うが普通電車だと丸一日掛かってしまうためためらっていた。赤い風船のウェブサイトでJR新幹線や特急を使い一泊の一人旅でも4日前なら割引料金で買えることを知り予約した。
7時2分名古屋発のぞみを予約したのに前夜の深酒が祟り、起きたのは6時30分。旅支度もそこそこにヨメに名古屋駅に車でおくってもらいすんでのところで飛び乗りぼーっとした頭のままで岡山に着く。何も食べていないのに気がついて
松江までの特急の中で食べようと岡山でモモの入れ物に入れたちらし寿司で「祭り寿司」を買う。岡山を午前9時すぎに出て松江まで2時間半の電車旅。車窓には見慣れた東海道の景色とは違う中国山地特有の谷の風景が続き遠くに来たことを知る。
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岡山名物 祭り寿司
祭り寿司も楽しみ、トンネルをくぐり分水嶺を超えて山陽地方から山陰にはいり雪のちらつく景色に悦にいっているとなにやらアナウンスが。ポイントが故障して切り替わらず復旧がいつになるかわからぬとのこと。単線ゆえポイントが生命線であり故障すると列車が通ることはできない。外は冬景色だが暖房が効いている車中でまあ急ぐ旅でもないのでひとり経緯を見守ることにする。まだ係員が故障現場についていいないとか、やっと現場に着いたが原因がわからず復旧に手間取っているとか途中経過を細かくアナウンスしてくれる。あー復旧まで一日くらいかかるのかも。不安でいっぱいになった頭の中だったが、あと5分で出発できるというアナウンスがあったのは止まってから一時間経っていた。matse1
分水嶺を越えれば雪景色

とにかく列車は動きだし、米子、安来をへて56分遅れて松江駅につくと松江でレディスファッション「フラッシュ」を経営している従姉妹のヒロコちゃんが迎えに来てくれていた。ヒロコちゃんは母方のいとこで、かって名古屋の南山大学に通っていてアホな中学生の私に英語の家庭教師をしてくれたこともある。ひさしぶりに懐かしい顔に会えてとてもうれしかった。夕ご飯を一緒にすることにしてひとまず松江しんじこ温泉駅まで車でおくってくれた。とりあえずひとり一畑電鉄で出雲大社に向かう事にした。電車の時間まで30分以上あったのでしんじこ温泉駅の近くをぶらぶらしていると足湯発見。ご年配の男性がひとりはいっていたのでそこに僕も入らせていただく事にした。話しているとだんだん人も集まり地元の言葉でお国自慢を聞いていると気持ちもあったまってきた。お名残惜しいが電車の時間が来たので足湯から上がる。
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宍道湖しじみ館前 足湯
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一畑電鉄 出雲行きの左はずっと宍道湖
出雲行きの一畑電鉄は単線で2両編成。ローカル線はゆったりした時間と空気がながれ旅をしているんだなあという気分に浸ることができる。左側にずっと宍道湖が広がり「千と千尋の神隠し」での千とカオナシが乗った電車のイメージそのまま。途中で一度乗り換えて出雲大社前駅に着く。私が旅をするときはたいてい平日なので有名な観光地でも人が極めて少なく有名な神社である出雲大社でも閑散としていた。のんびり参道をあるいていたら道路に敷く敷石の裏に好きな事を書くというイベントをしていた。敷石一枚一万円くらいするかと思ったらなんと無料だとの事。山陰はやはりのどかだなあとおもいつつ私も敷石の裏に思う事を書かせていただいた。お腹もすいて来たのでこのへんで美味しいお店が無いか聞いてみたらすぐ近くに観光案内所があるからそこで聞けと言われ観光案内所に行くと若い女性が詰めていて熱心に教えてくれた上、親切にも店が閉まると行けないからと出雲蕎麦のお店を電話で予約してくれた。店は出雲大社のちかくの「やしろや」でおすすめの出雲蕎麦をいただく。出雲蕎麦は割子3段になっていて10割そばだとのこと。昔出雲参りの人から出雲のそばはうまいという声がひろがって全国に有名になったそうだ。黒くしっかりしたコシがあって旨かった。そばでお腹が落ち着くと目の前に島根県立古代出雲歴史博物館があったので見ることにした。
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「やしろや」の出雲蕎麦
まず入ったらすぐに出雲大社ご本殿前から出土した巨大神殿柱を展示。また古代には48mあったと言われる神殿の模型や古代のジオラマなどがある。なにより凄いのは1983年発見の荒神谷遺跡から出土したおびただしい量の銅剣、銅矛、銅鐸の多くが展示してある事。わたしは知らなかったが発掘された時それまでに日本全国で出土したものと同じくらいの量がでてきたから世紀の大発見として大ニュースになったそうだ。これらはすべて国宝だということ、係員さんの熱のこもった説明にこちらも歴史ロマンの前にテンションが上がった。
観光地によくある博物館だと正直タカをくくっていたが、そのコンテンツの濃密さには驚いた。 

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巨大神殿の模型、神官の小ささに注目。現存したらローマのパンテオンにも肩をならべただろう。
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おびただしい数の銅剣
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古代の楽器だったという銅鐸
もっと時間をかけてみたかったが帰る時間もあるので出雲大社に向かう、勢溜といわれる大鳥居の前から本殿では坂道を下るがこの形式は日本でここだけだという。出雲大社は来年平成の大遷宮がある。すべてを一新する伊勢神宮と違い屋根の葺き替えと修繕をする。出雲大社は縁結びの神として知られる。縁と行っても男女の縁だけではない。このネット社会でいうと「リンク」という重要なエレメンツが「縁」なのだ。出雲大社の精神は現代に通じると感じた。出雲独自の参拝方法2拝四拍手一拝でこれからも多くの縁をいただくよう祈願した。
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勢溜から本殿までの坂道