福井、石川、富山の三県はとなりあっていて鉄道、高速ともに便利なので名古屋からの小旅行に最適だ。ローマ、フィレンツェ、ミラノ、トリノなど都会に住む人が休日に周りの美しい小都市にドライブにでかける小旅行をイタリア語でジータといってイタリア人も大好き。ぼくも月に一回だけの連休には骨休みに泊まりの小旅行をすることが多い。
永平寺を去ったあとは今晩の宿であるあらや滔々庵に。加賀インターをおりてしばらく走ると田んぼの平地をすぎたあたりが山代温泉、古い立派な木造の建物「古総湯」の前にあらやさんはある。
幸いにしていままでなんどか温泉宿に行く機会はあったがそのなかでぼくが一番すきな宿がここ。清潔感のある簡素な造りの建物だが靴をぬぐと部屋も廊下もずっと畳で裸足ですごすことができその足の感覚が快適でリラックスする。北大路魯山人ゆかりの宿でもあるので魯山人の器や掛け軸、屏風など本物がさりげなくならべてありさながらプライベートの美術館だ。喧噪もなく客にこびたエンターテイメントもなくゆったりとした時間だけがこの旅館に流れる。料理は地元の旬の材料を使い、こころこもった設えでが九谷焼の素晴らしい器に盛られて出てくる。とはいえどうだと言わんばかりの押し付けがましくなく、その食事を食べると間違いなく身体が癒されるのがわかる。そしてここの楽しみは温泉。「烏の湯」は温泉における「禅」だと思う。黒い壁と柱状節理の自然石、そしてぬるい温泉の浴槽と熱い温泉の浴槽。湯気の白と黒い壁と岩のモノトーンの世界に驚くかもしれない。その他は洗い場もなくシャワーがあるだけ。ぬるい温泉と熱い温泉に交互に入る。熱い湯に緊張した皮膚がぬるい湯に入るとやわらぐ。なんども入ると皮膚感覚が鋭敏になりいままで気にも留めていなかった自分の肉体を再認識することとなりそれが禅の境地にも通じる気がするのだ。かって行基はカラスがお湯に入るのを見て山代温泉を発見したという。その流れを汲むあらや滔々庵の「烏の湯」はまさに瞑想の世界である。

加賀市山代温泉 あらや滔々庵 〒922-0242 石川県加賀市山代温泉湯の曲輪 TEL : (0761)77-0010

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まずは梨のすり流し
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お造り
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ノドグロの焼き物
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焼きまつたけ
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毛蟹
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烏の湯 ぬるい浴槽
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烏の湯 熱い浴槽。庭の漆器だけがこの風呂の中で彩りが有るもの。