JR特急しなのに乗り、火曜の午後5時52分塩尻駅に着く。わたしの大事なお客様、岡藤さんを訪ねるための旅。岡藤さんはあのアットリーニを愛用していた方だったが約8年ほどまえだったか当店オーダーされてからは年に数回当店にお越し頂き季節の新しい素材の中からオーダーしていただいている当店のいわばファンである。今回は岡藤さんの後輩ウスイさんが親族のためにジャケットをプレゼントしたいので山梨まできてくれないかというお話をいただいた。45才頃までオーダーいただくためいろいろな場所を訪問するのも大事な仕事だったがご来店のお客様が多くなった今では出張に行く事は少なくなった。とはいえ一番の理解者とでも言える岡藤さんのオファーなら断よろこんで行こう。それで塩尻に向かった。
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岡藤さんと再会。

塩尻に着くと名古屋と違う清らかな空気がながれている。岡藤さんの仕事場にむかう道すがら、まるで印象派のような並木道が町のいたるところにある町の景色をながめていたら急に昔の記憶がよみがえりこの町に40年前来た事を思い出した。

高校二年の時、隠れてガソリンスタンドでアルバイトをしてミニクロとよばれるSUZUKIの50cc原付バイクを買った。 そして夏、まだ見ぬ町を目指し一万五千円をにぎりしめ、ひとり19号線を北に向かった。多治見の友人、ミシマの家で一泊した後、木曽谷のワインディングロードを小さなバイクで登って行った。どこまでも行こう、道は険しくとも、口笛を吹きながら、走って行こう。当時そんなコマーシャルがあったがそのときの自由な気分はまさにそれだった。走り続けたら、知らない町のガソリンスタンドで3000円くらいで泊まれる宿はどっかありませんかと聞き宿を決めた。松本では松本城をながめ、安曇野では碌山美術館とワサビ田、大町ではクロヨンまでいこうかと思案したり、長野では善光寺で暗闇の中に音がする天国の鍵を探す胎内巡り、野尻湖、黒姫山まで足を伸ばした。そして塩尻をすぎ諏訪湖で一泊して飯田から山越えして、最後の夜は豊田の友人チカダの家にとまった。親に何もいわずに一週間以上家を空けたはず。帰ったら母親にいったいどこに行ってたのときつく怒られた。

仕事を終えて夜は岡藤さんウスイさんといろんなことを語りながらのたのしい食事と地元名産のワインを楽しむ。土産土法、地元でとれた葡萄をつかったワインはただただノドに優しく流れて行く。
そして明けて昨日水曜日休みなのでは小淵沢まで足をのばしウスイさんとゴルフをすることとなった。場所は小淵沢インターからクルマで10分、高原のみどりのなかにたたずむ北の杜カントリークラブ。高原でのゴルフはゴルファーの夢でもある。朝はあいにく雨がちらついていたが、ゴルファーにとって雨なんか慣れっこであるので朝9時にティーオフした。高原にあるのにフラットなコースで高温多湿の名古屋周辺のゴルフコースと違い、フェアウェイは野芝。良いスイングをすると手入れの良い野芝からのショットはすぱっとヘッドが抜けて心地よい感触が手に残る。スコアは相変わらず凡庸だったが、スカッとした若者たちとのゴルフは本当に楽しい。 ぼくのゴルフは撫でるようなスイングだが一緒にプレーした若者はブンブン振って、ああボールってこんな飛ぶんだなと思える。北の杜カントリークラブ、またここにはかならず来たいと思えるそんなゴルフコースだった。
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芝は青く、コースはきれい。
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あいにくの雨だったがプレー終わる頃には山が雄大な姿を現した。