冬来たりなば春遠いからじとはイギリスの詩人シェリーの「西風に寄せる歌」の一節「If winter comes, can spring be far behind?」から来ているそうだ。暦の上では四月はもう夏。いまなら夏来たりなば秋遠からじというべきかもしれない。
当店も夏物の最盛期を迎えながらもうすでに当社のメイン取引先であるロロピアーナ社、エルメネジルドゼニア社への秋冬の反の発注は完了した。良い素材と認めたものは反で発注し多くのお客様にリーズナブルな価格で提供するのが当店のポリシー。繊維商社の残り物の反を買い叩き看板ブランド服地に仕立て上げるのが得意のショップが世の中に存在するのはよく知っている。しかし私はそういうハゲタカのようなビジネスにはくみしたくない。ピッティウォモなど一年先のシーズンを見据えた本場ヨーロッパの新しい柄や素材感の情報を入手し、また伝統的なずっと紳士に愛される柄をロロピアーナ社のようなオーストラリアでスーパーファインな羊毛を継続的に買い付けている会社に織ってもらう。スーツやジャケット分として既にカットされた着分ベースの発注なら生産したものを買うので一ヶ月前でも間に合うが反を新しく織り上げるとなると話しは変わってくる。9月の秋冬シーズンに間に合わせるために5ヶ月前には発注しなくてはいけない。だから四月が秋冬の発注の時期となる。今回はロロピアーナの担当者が来店した際、まず秋冬のスーツ素材で一番お客様から期待されている世界最高のスーツ服地と言われるウインタータスマニアン150の今年の柄を7色選び。そして新しくリリースされた素材のなかからスーツにもジャケットにも使えるムリネー(杢糸使い)の「ドリームツイード」を選ぶ。 一着ずつとは違いヨーロッパ製の新車が買えるくらいの金額になるので選ぶのも慎重になる。発注したあと、間違いなくその素材が指示通りに仕上がって来たかを確認するためイタリアのロロピアーナ本社からはリフェレンスサンプルが発行され、そしてそれももうすでに当店に届いている。このメーカーの発行した台紙を使ったリファレンスサンプルの有無が新たに織り上げたかどうかの証明になるだろう。当店にご来店の際にはご覧いただくことも可能。来る9月になれば世界一新鮮な服地が当店で見られるはず。
ロロピアーナ社の担当者との買い付けの様子。
次の秋冬のためにこんな素敵なムリネーのグレーウインドペンを選んだ。このロロピアーナ「ツイードドリーム」はジャケットにもスーツにも使える。
ロロピアーナ本社から送られて来たリファレンスサンプル。今年もウインタータスマニアン150を反で7種類買い付けた。もしご興味のある方はご来店の際にご覧いただけます。