先週、九州の縫製工場にモデリスタの柴山登光先生、高田友喜先生と共に訪問しました。

いまや高級スーツ、ジャケットのシンボルである毛芯縫製。毛芯縫製を得意とするその縫製工場にはもちろん当店だけではなく、東京をはじめ全国数々の名店、テーラーが縫製を依頼しています。5月、エルメネジルド・ゼニアの昼食会でもほとんどのテーラーがその縫製工場に依頼していたことにちょっと驚きました。

それなら、当店でオーダーしても、他店でオーダーしても同じじゃないかとおもう方もあるでしょう。でもサイジングの違い、生地の選択の違い、ディテールの選択の違いで、同じ縫製工場で仕立てていても、全くと言っていいほど違うテイストになります。

そして一つ当店の独自仕様があります。胸のバルカポケットは通常は機械仕上げですが、当店は縫製工場に特にコストを払って「手縫い仕上げ」でお願いしています。一つ仕上げるのに機械仕上げなら一分未満で完成する胸のバルカポケットですが手仕上げなら熟練の技術者がやっても15分かかります。上着で一番目立つポイントともいえる胸のバルカポケット。手縫いなら左右とも丸く、さわってもなめらかで美しく仕上がります。

いままでオーダーサロンタナカで仕立てたお客様はご自分の上着のポケットを一度ご覧になってください。手縫い仕上げで仕立てていることがわかるはずです。

白いしつけ糸を打って、その脇を丁寧に手で縫っていきます。
ひと針ひと針、手で縫っています。いちばん目につくバルカポケットですから。
当店で仕立てたすべてのスーツ、ジャケットのバルカポケットは手縫い仕上げです。左右の上が丸くなっているのがその証です。触ってみていただけばなめらかなのでわかるはずです。
ラペルのカーブ、胸の立体感、バルカポケット上部左右の丸み、これが当店スーツのアイデンティティ。