カラバッジョの奇跡
我々夫婦は10数年前、ローマで素晴らしいカラヴァッジョの絵を見て、この人の絵は他の西洋絵画の誰とも違う別次元であることを認識しました。それ以来カラヴァッジョの絵を見る巡礼を続けています。ミラノ、フィレンツェ、ナポリ、シチリアなどイタリアの都市以外にも、ロンドンのナショナルギャラリー、パリのルーブル、マドリードのプラドにもカラヴァッジョの傑作はあり、そこを訪れた後、個人旅行では難しいロシア、サンクトペテルブルクに友人、奥山くんの協力で向かった時、或る「奇跡」を感じました。それはカラヴァッジョを求めて見に行くとたまたまエルミタージュ美術館で特別展が開催されることでした。以来ロンドン、ローマ、で同じことがありました。昨年などは我が家の至近距離にある名古屋市美術館にカラヴァッジョの方から来たのです。今回もたまたまピッティウォモの後、巡礼を決めたウイーン美術史美術館で大規模な特別展カラヴァッジョ&ベルニーニが開催、他の都市にある作品も見ることができるという幸運に浴したのです。カラヴァッジョはそういう特別展で世界を回っているので美術館でお目当ての作品を見に行ったら巡回中で空振りだったという経験もありそうなものですが、ローマ、コルシーニ宮が臨時休館だった一度だけでした。
先に知りうる者だけが持てる宝
前ブログで書きましたがウイーンの美術史美術館はハプスブルク家の領土かもたらされたコレクションを基にした世界屈指の美術館です。何せ傑作絵画は一枚ずつの存在ですから西洋絵画の価値に気がついた国から良い絵を集めています。カラヴァッジョの傑作を3枚持っているということはかなり早い時期にハプスブルク家所有になったはずです。その美術館所有3枚をまずご紹介しましょう。
ゴリアテの首を持つダヴィデ
このテーマではローマボルゲーゼにもう一枚あります。ダヴィデは剣を肩に担いでいるのがこの絵の特徴です。
ロザリオの聖母
聖ドメニコの奇跡を描いた大作です。カラヴァッジョ得意の群像におなじみの出演者が何人か登場しています。聖母からロザリオを賜った聖ドメニコが民衆にロザリオを配っています。下の民衆の足が汚れているのはロレートの聖母と同じです。
茨の冠のキリスト
捕らえられたキリストに無理矢理イバラの冠を力ずくでかぶせるヴァイオレンスな瞬間。キリストがたくましい身体をしています。刑使に乱暴にされてもキリスト強しということでしょうか。甲冑の黒が絵にドラマを与えています。