1月14日から愛知県美術館で岡本太郎展開催中で見に行った方も多いと思います。先日、ステファノビジさんに会ってのネクタイ買付のついでに表参道近くの根津美術館に伺いました。近くに岡本太郎記念館があると知ったのですが、愛知県美術館の岡本太郎展は大規模な展示でしたので、たぶん記念館の展示はがら空きじゃないかなと考えもしましたが、せっかく近くに来たので立ち寄ることにしました。

おしゃれなブティックやファッションブランドのフラッグショップが並ぶ青山界隈から一本入った静かな場所に岡本太郎とパートナーの岡本敏子さんが暮らした小さな邸宅が岡本太郎記念館として残されていました。庭には岡本太郎作のオブジェが置いてあり、こじんまりしながらも素敵な空間です。

中はまさに普通のお宅で、岡本太郎が暮らしていたという臨場感がありました。どうやら岡本太郎が亡くなる直前、作品の多くは川崎市にある岡本太郎美術館に寄贈されたそうで記念館は完成していない作品や太郎が作品を制作したアトリエ、オブジェなどが残されていました。

アトリエにはあのあふれるような絵のアイディアの熱気がそこにとどまっているようで、太郎世代のわたしにはグッときました。1990年代、「芸術は爆発だ!」とぎろっと睨むマクセルのCMで「ちょっとテンションの高い風変わりなおじさん」として岡本太郎は若い人たちに認知されていました。パートナーの岡本敏子さんは太郎亡き後、そのイメージを払拭して真の芸術家であることを知ってもらいたいため、メキシコで行方不明になっていた壁画「明日の神話」を探し、無残にもバラバラになっていたその絵を完全に修復し、渋谷駅に掲げるべく活躍中に亡くなったのでした。その二人の生き方が、記念館でつぶさに語られていました。

まだ書きかけの絵が多く残る岡本太郎のアトリエ
筆などが残り、生前のエネルギッシュな制作の姿が目に浮かぶ。
岡本太郎作 ピエタ
太郎が暮らした居室
庭はオブジェが置いてある楽しい空間
太郎作オブジェのかたわらに太郎氏の笑顔がすてき

記念館をあとにして、渋谷駅まで歩いてあらためて「明日の神話」を仰ぎ見た時、これは岡本太郎の「ゲルニカ」なんだなとおもったのでした。鮮烈な赤の色がこころを打ちます。

現代のサグラダファミリアの如くずっと工事が続く迷路のような渋谷駅にある「明日の神話」。