スーツは「匿名」。表にブランドネームが書いてある訳でもなく、ディテールも特に変わったものはなく基本的にはずっと受け継いで来たものだが良いスーツは一目で分かる。服地の一瞬の動き、表面の素材感、そしてそのスーツの3次元を感じるシルエット、こういうスーツの完成をめざしてテーラーは素材を客に奨め裏地、芯地などを選び、そしてサイジングをしていく。テーラードのスーツをオーダーするには慣れも必要かもしれない。最初はおすすめに従ってお客様は選んで行くが、次第に平面である服地を見てその出来上がりを想像するいわばイマジネーションの力が何着もテーラーと共に作り上げて行く体験を通してお客様に備わっていく。

この美しいスーツをお召しのお客様は何度も当店でオーダーを重ねた方。すこしずつサイジングを変えてご自分のスーツ世界をお作りになった。どんな言葉を重ねるよりこの服を見ると分かる。胸のボリュームラペルのふくらみ、肩になだらかに沿ったライン。写真のしろうとである私が撮影したのだがその美しさが十分表現されている気がする。

ちなみにこの服地は英国製 ドーメル365 ミディアムグレーシャークスキン 1mあたり260g 美しくも穏やかなツヤをそなえたスリーシーズン素材。来年の春にはスペシャルプライスで登場する予定。 

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先週納品したO氏のスーツ。やや太めのピークラペルがエレガント。
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男の色気を感じる背中のライン。