当店ではお客様からオーダーをいただいたスーツ、ジャケット、パンツは日本国内、九州にある一つの縫製工場が仕立てを担当している。どんなお客様でも、たとえば仕立てにこだわる熟年のお客様のスーツも、オーダーすることが初めての若いお客様のスーツもいっさい区別する事なくその縫製工場が仕立てている。また素材についても同様でスーパー170などの超高級素材でも国産ウールスーツ素材でもその工場が仕立てる。

そういうのが普通だと思われると思うが例えばデパートなどでは高いスーツはA工場、安いバーゲンの時のスーツはB工場と価格によって、また同じデパートのなかでも売り場により複数の縫製工場を使い分けていると聞く。それではたとえサイズがいっしょであっても服のテイストは全く違ってくるとわたしは思うのだ。30年以上という長い年月でいままで3万着以上も縫製してもらっているその縫製工場の特製、クセを知りつくしている。長い事同じ縫製工場とつきあって情報を共有し合いはじめてオーダーサロンタナカのスーツ、ジャケットのテイストが出来あがるとわたしは考えるのだ。

私どもがその工場にずっと縫製を依頼している理由は
  • 1.毛芯縫製専用工場である事。毛芯縫製専用という事はエコノミーなスーツを縫う接着芯専用工場とは違い高価格帯、つまり高級スーツを中心に扱っているという事を意味する。
  • 2.繁忙期でも閑散期でもつねに一定の品質であること。納期も大きなブレが無いこと。
  • 3.優秀な指導者である柴山登光先生が指導していること。また柴山先生を通してトレンド情報もきちんと把握していること。
  • 4.基本的にテーラードスーツ専門でありなんでも縫えるわけではなくけっして器用ではないがずっと高い品質を維持していること。

この縫製工場ではスーツジャケットは馬の毛を一本なり継がずに使った本バス芯を縫い付けた薄い毛芯を使って、アンコンジャケットは薄く軽い毛芯を使って仕立てている。わたしも自分自身のスーツを仕立てるときは100%この工場のこのグレードでお願いしている。もちろんディテールについては各種用意しているがグレードは私自身が気に入って選んだベストと思うひとつだけにしている。「ひとつの縫製工場、ひとつのグレードのみ」それがいちばんフェアなビジネスだと思うのだ。
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ベテラン技術者が多く働く当店の縫製を担当する日本国内工場。2012/10/19撮影
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ハンド工程も多い。2012/10/19撮影
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工場での縫製過程で見つけたの当店のスーツ。2012/10/19撮影