今はネットでなんでも買える時代。私自身も本やCDはもちろんのこと、家電やゴルフ道具もアマゾンや価格ドットコムで買うことが多い。町の専門店で買うと親切にお世話いただいていいなと思うこともよくあるがやはり値段につられてネットで買うことがおおいこのごろ。
今日、見ず知らずの人から営業の電話がかかってきた。
見ず知らずの営業「私どもヤホーの特約店でホームページでのネット販売を使った売り上げUPにご興味はありませんか?」 
私「売り上げ向上にけっして興味がないわけではないですが。」
見ず知らずの営業「それならぜひ当社にうんぬん」
私「 あなたがスーツをオーダーするときネットでオーダーします?」
見ず知らずの営業「は?」
私「スーツをオーダーするには採寸というスキルが必要なんですが買うお客様にそのスキルを要求するのはむりなのでは。」
見ず知らずの営業「そうかもしれませんねえ。」

ネットでオーダーを受け付けない4つの理由

  1. スーツのオーダーだと採寸が重要となる。メジャー一本でお客様自身が自分の身体を計ることは難しいだろう。たとえできたとしても、その計った数値は正確だと言えるのか?何万もお金を払って自分で計るというリスクを冒し満足いくスーツが出来るのだろうか。
  2. たとえ正確に計ったとしても、その身体に対してどういう服を仕立てるつもりで肩幅、バスト、そで丈、着丈、ウエストの絞りを数値を設定していくのか? それは何着も採寸してそして出来上がった服を検証してはじめて身に付くサイジングという「スキル」である。
  3. 服地により厚みや重み、色合いも違う。服地によって微妙に決めた数値にさじ加減を加えることもある。そういうこともサイジングの重要なしごと。
  4. できた服を送るからそれから寸法を採ってくださいという方もいらっしゃる。でもそれでは姿勢や肩の傾きなど「体型」は判別できない。またサイズはいっしょでも縫製工場ごとのテイストがあるので縫製工場が違うとその服と同一のテイストでは出来上がらない。

本当にありがたいことに毎日のように電話かメールで遠方からのお客様からのお問い合わせがある。もしネットで採寸できれば遠方にご在住の方からオーダーいただけるのだが最低一度はやはり店主である私自身が直接採寸の上、実際出来上がった服を何着も試着してサイズ決め(サイジング) するべきだと考えている。そうやってはじめて、着心地が良くて美しいスーツができる。わたしのそうした思いをご理解いただき、ご遠方から足を運んでいただいた方には申し訳なさで手を合わせたい気持ちでいっぱいだ。青森からご家族全員で洋服を作るためだけに飛行機に乗っていらっしゃったお客様もいらっしゃった。感謝の上に感謝を重ねても感謝しすぎることはないと心から思っている。

そして一度でもオーダーいただけたら寸法データがあるのでそれはメールでも電話でもオーダーは可能になる。ご自分の寸法データもひとつの資産と考えられるかもしれない。時代遅れかもしれないがこれからも初めてのオーダーの際にはご来店いただくことを当店のポリシーとしていきたいと思います。
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柴山登光先生が作成されたパターンに基づいて、ロロピアーナなどの高級素材で実際に服を仕立て、それを着ていただきサイズ決めをしていく。体型補正や微調整も加えて店主自身がおひとりずつ採寸サイジングしていく。