金曜、目が覚めたら天気予報どおりの雨ではなく曇り空だったので名古屋城の周りを桜の花を惜しんでひとり散歩することにした。歩くに連れて昨晩飲んだアルコール分が徐々に抜けてきて気持ちが晴れやかになる。散り始めた桜の花びらで舗装された道は季節の移り変わりを感じる。桜を愛でているとおなじソメイヨシノとはいえ早咲きの桜と遅咲きの桜があるのに気づく。早いのだとほとんどもう散っていて緑が芽吹いている桜も有るが名古屋の能楽堂の横の桜はいまが盛り。遠景の石垣にも映える名古屋でも極上の桜だと思う。歩いているとつい最近までいばらのとげの有る枝だけが密集し、イタリアの教会で見る磔刑のキリストの茨の冠のようにも見えたカラタチから可愛い芽が吹いていた。まさに木の芽どき、もうすぐここに揚羽蝶も集まってくるんだろう。ああ季節は夏に向けてすすんでいるんだなと心から実感した。
石垣にさく絢爛たる桜 名古屋城
カラタチの枝からも新芽が 名古屋城
日中はぽかぽか気持ちいいが花冷えというのか朝晩はまだまだ寒さの残るこの季節だが夏はもう目の前。オーダースーツは注文を受けてから出来上がるまでだいたい一ヶ月かかるため今、当店にオーダーにいらしゃるお客様には夏の素材をすすめている。そして実はもう冬物の仕入れの時期が始まっている。紳士服地は織物工場で約155cmの幅に織り上がったものを汚れが付かないようにして中を表に半分に折りそれを巻いて50mや75m単位で一反とする。英語で言うと一反はA PIECE。色柄、デザインを決めてウールの原毛を糸にして織り上げて仕上げをすると4ヶ月は掛かり、冬物のシーズンが始まる9月一日に店頭に用意するにはもう桜の咲く今くらいに発注しないと間に合わないということになる。金曜日その第一弾としてまずロロピアーナの担当者と冬のスーツ素材としてどれを選ぶか相談して決めた。モードの流れとお客様の顔を思い浮かべながらどの色柄で反発注するか選んだ。その柄はロロピアーナ社から「リファレンス」といわれる参照見本が届く。そうしたらどんなものを買い付けたかこのブログでも紹介できるかもしれない。
ロロピアーナ担当者と冬素材を選ぶ。
ちいさなサンプルでもスーツがイメージできるのが洋服屋。