フィレンツェの目抜き通りトルナブオーニ通りの中程ストロッツイ宮殿からすぐ曲がった場所にある裏地店「マリック」で裏地を買い付けるようになってからもう6年になる。初めてここを通った時ショーウインドーから見える店内があまりに美しい色だったので思わず入ってしまった。最初、着色した紙だと思い店主にたずねたらそれはすべてキュプラ100%製の裏地だと言う。キュプラ100%裏地をつけるのは当店のポリシーにほかならない。それで試しに数着分買い付け、試験的にスーツにあしらってみてその肌触り、色合い、通気性などそのパフォーマンスに十分満足したので店主アンドレア氏との取引が始まった。以来ピッティイマジネウォモの際は必ずマリックに立ち寄り、裏地の相談をする。
長い取引となったがアンドレア氏の極めて几帳面な性格はよくわかった。だからキュプラ100%の裏地をあんなにも美しく揃えて並べられるのだろう。決して大きい店ではないが裏地でグラデーションになった店内は間違いなく世界で一番美しい裏地店だろう。イタリアの既製品ではキュプラでなく一格落ちるビスコースの裏地を使う事が多いがそこはアンドレア氏のプライドでキュプラ100%に限っている。そのこだわりのため、フィレンツェの有名テーラーはこぞってマリックの裏地を使っている。 先日は日本のBS朝日の番組「ヨーロッパ一番旅行記」でも有名テーラーセミナーラさんが愛用する店としてマリックの店が紹介された。また洋装店やイタリアの一般の主婦の来店も多い。
今回もマリックの裏地が色々入荷した。いままで在庫のあるものも含めるとかなりの色が当店で選べる。マリックの通常の裏地ならプラス4000円で当店のオーダースーツにつけることができる。チェック、ペイズリーなどスペシャルな裏地は6000円追加となっている。今回スペシャルな裏地として新しく、ジャガードで織った美しいチェリーブロッサムつまり桜の柄の裏地。けっして派手ではなく花のエレガントな香りが漂うような裏地が登場した。まるでアートのような裏地で一目で欲しくなってしまった。当店は日本国内の縫製だが、ロロピアーナの表地素材を使い、マリック裏地で仕立てるとイタリア・フィレンツェのテイストを感じるジャケットやスーツになるはず。
フィレンツェのシニョーラの相談を受ける店主アンドレア。こんな美しい店は彼が綺麗好きゆえ。
今回買い付けた裏地
今回買い付けた美しい桜の柄の裏地。こんな上品でエレガントな裏地あるだろうか。まるでアート。
くしくもマリックの近くストロッツイ宮殿まがったところででキュプラの宣伝をつけたタクシー発見。やっぱり裏地はキュプラしかないと思う。ポリエステルの裏地なんてつけるとムレていやだ。