プロとしてちゃんとやっていていけるかどうかを判断するときに、その職業が扱うアイテムが好きかどうかはやはり重要だとおもう。きんぼしの弟などは毎日焼き鳥を炭火で焼いているのに、休日のときは鶏を喰うのが大好きだという。おまけにケンタッキーフライドチキンにも目がないそう。以前スーツ屋だけどスーツを着たくないのでいつもデニムを着ているいうテーラーに会ったことがある。あんなヤツは絶対成功しないと思っていたがその後あまり彼の話題を聞いた事がない。スーツが好きでたまんない、そんなスーツラヴァーしかスーツをあつかう資格はないというのは言い過ぎだろうか。

私は羅紗店つまり紳士服地の問屋の四人兄弟の長男として育ち、それほど裕福でもないのに私立中学に入ったものだから父母も経済的には大変だったのだろう。中学高校といい服を買ってもらった記憶がほとんどない。1972年初めの頃、同級生の裕福な友人達は、ガキの分際で当時人気だったVANのショップに入り浸ってアイビーやトラッドの服を買ったりしていた。あげくにVANはもういかんぞ、KENTのほうが良いぞとか親の金をあてにしながらほざく奴らに歯ぎしりしていた。ぼくはというと当時はユニクロやファストファッションもなかったからいつもきたきりすずめ。給料が貰えるようになるまで服には不自由していたので洋服についての渇望が常に強烈にあった。だから55才を過ぎた今でも服についての強い執着がある。限られた予算の中で最大限おしゃれを楽しみたい。そんなお客様のこころが我が事のように理解できる。

結果的に若い頃の環境は洋服のプロになった土壌だったかもしれないといまは思っている。これは父母祖先に感謝しなけりゃいけない。

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