先週木曜日に上野国立西洋美術館で今月初めから開催されているカラヴァッジョ展にでかけた。
西洋絵画史上でだれが一番上手いか考える思考訓練をしてみる。ラファエッロ、レオナルド・ダ・ビンチ、ベラスケス、レンブラント、フェルメールあたりの名前は間違いなく上がるだろう。しかし革新性、その後の画家への影響力の大きさそしてドラマ性を考えるとカラヴァッジョの右にでるものはいないのではないか。
イタリア出張の際は時間をみつけてローマ、フィレンツェ、ナポリ、ミラノにあるカラヴァッジョを見ている。そしてパリ・ルーブル美術館、ロンドン・ナショナルギャラリー、サンクトペテルブルク・エルミタージュにもカラヴァッジョを追いかけていった。
カラヴァッジョの絵は間違いなくイタリアの以前の通貨リラの中に肖像画が描かれているくらいイタリアの至宝であり、それを持つ美術館の「至宝」である。 ヨーロッパの美術館にあるカラヴァッジョの絵の前にはたいていその魅力に酔いしれている人で人だかりができている。今回はこのまさしく「至宝」が11点日本に集まる。これは奇跡と言わずしてなんと言おう。

ミラノ、ブレラ美術館 「エマオの晩餐」
ロンドン、ナショナルギャラリーの「エマオの晩餐」はもちろん名作だが、 ミラノっ子はロンドンより静謐な感情表現でこちらのほうが良いと胸を張るブレラの至宝でありミラノの宝でもある。エマオの街にキリストが復活後に現れた瞬間を描く。
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これは今回の展覧会の公式解説書を写真に撮ったものだが実際の絵の迫力とはぜんぜん違う。

バルベリーニ、ローマ国立絵画館 「ナルキッソス」
ナルシシズムの語源となったギリシャ神話で、ナルキッソスが水を飲もうと、水面を見ると、中に美しい少年がいた。もちろんそれはナルキッソス本人だった。ナルキッソスはひと目で恋に落ちた。そしてそのまま水の中の美少年から離れることができなくなり、やせ細って死んだ。そんなシーンを描いている。バルベリーニの中で特に有名な一枚でこの絵の美少年ナルキッソスを愛する現代女性も多いと聞いている。
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フィレンツェ、ウフィッツィ美術館「バッカス」
頭に花の冠をかぶりワイングラスを片手に恍惚としているホモセクシャルな美少年の絵はじつはちょっと奇妙な絵である。でも「絵画」における奇妙さとはまるで「変化球」でなぜか人のこころや記憶に深く残るもの。これはウフィッツイの偉大なる「変化球」だと言える。
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ローマ、コルシーニ国立美術館「洗礼者ヨハネ」
二年前だったか妻とこれを見にタクシーを飛ばして見に行ったらなんと美術館の臨時休業で見られなかった。そして去年6月ピッティ・ウォモの帰りにまたローマのここに出かけ、ついにこのイケメンに会ったのだが、これがなんと日本に来た。妻は今回やっと会えたというわけ。
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個人蔵の銘品について
美術館に所蔵しているものは美術館に行けば見られるのだが個人蔵のカラバッジョはおいそれと見ることはできない。今回は以下の個人蔵のカラバッジョが来ている。カラヴァッジョ・ファンならこれを見逃す手はあるまい。 
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マッフェオ・バルベリーニの肖像 個人蔵
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法悦のマグダラのマリア 個人蔵

今回のカラヴァッジョ展はイタリア友好150周年記念と銘打っている。だがこんな名作が現地イタリアの美術館を長期空にして、一挙に来るのはいかにも謎、もしくは奇跡ではないかと思っている。ちょっと前に読んだ本で、実のところ本物のダビンチ作ではないかと言われる「ターボラ・ドーリア」というフィレンツェ、ベッキオ宮殿を飾るはずだったダビンチ「アンギアーリの戦い」の下絵といわれるものを日本のある新興宗教系美術館がまわりまわって手に入れ、それをポンと無償でイタリアに返還したという本を読んだ。この展覧会はどこにも書かれていないがイタリアからのその御礼ではないかとわたしは勝手に想像している。識者よ、いかが思われますか?このサイトを参照。 その絵の関係者が書いた本はこれ。「ダ・ヴィンチ封印「タヴォラ・ドーリア」の500年