今日は2016年の最終営業日。今年は今まで以上に多くのお客さまからオーダーいただきました。当店をご支持いただいたお客さまに本当に感謝しています。これはロロ・ピアーナ、エルメネジルド・ゼニア、ドーメル、御幸毛織、ドミンクスなど素晴らしい服地を供給くださった織物工場様、そして何より37年間ずっと当店のオーダースーツの縫製を担当している工場が誠実な仕事をしつづけてくれていることが支えていただいた結果にほかなりません。本当にありがとうございます。

現在九州にあるその縫製工場は、1970年代、減少の一途をたどった手縫い職人の仕事を代行しテーラーの仕事をサポートするために設立されました。当店先代社長田中茂は試作に縫われた一着のスーツをみてその柔らかさに気づき、当店の洋服すべてをそこで縫製することに決定したのが1979年。 既製品のスーツ工場でなくテーラー支援のための工場ですから、テーラーの技をシミュレートすることがその工場の命題。既成品が使う接着芯ではなく毛芯縫製専門の工場であることがその出自を証明しています。当時は、無難ですが決してオシャレであるとは言えない通称「インターナショナル」というモデルを縫製していました。1990年代世界的にナポリを中心としたイタリアの伝統的洋服が見直されてクラシコイタリアが知られるようになりました。テーラーで仕立てられる洋服の美しさを見つめなおしクラシック(正統)な洋服へ再認識が行われました。20年前独立してモデリスタの道を歩み始めた柴山登光先生が我が縫製工場のパタン作りと指導を担当。手縫いテーラーから出発し、工場立ち上げに参画、その後当時一世を風靡したエーボンハウス、シャンタルデュオモの工場長も歴任した柴山先生は縫製技術一辺倒ではなくイタリアのクラシックスーツへの造詣が深かったのです。柴山先生の指導で我が工場は旧来の「インターナショナル」からパターンを一から作り直し、使用する毛芯に本バスを採用するなど材料も縫製方法も見直し、その後「クラシックスーツ」の代表的ファクトリーとして進化し評価されるに至りました。その後パンツ、ジレなどのアイテムも含め細部を常に検証し何度かバージョンアップ続けたのが現在の当店のスーツです。
来年も縫製工場、マエストロ柴山登光先生と手をたずさえ、美しいクラシックスーツ作りに歩を進めます。これからもよろしくお願い申し上げます。 

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先日柴山登光先生のスタジオで。
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小池百合子知事から東京マイスターに認定。先生はもっと顕彰されてもいい。
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工場といっても、服はこうして手で作られる。縫製工場内
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本バス毛芯を取り付けた前身。縫製工場内
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CADでテーラーの裁断技術を完全シミュレート。これで柴山先生が裁断されたのとほとんど同じになる。縫製工場内
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チェックは柄合わせのためCADで紙をカットしてから手裁断。縫製工場内。