日本人は欧米人より前肩体型なので、スーツを「前肩」に仕立てるといままでより着心地がよくなることはわかっていました。しかし立体物であるスーツを変形して前肩にする作業は思ったより簡単なことではありません。それでもいままでよりさらなる前肩を目指し、日本最高のモデリスタ柴山登光先生とともに2年前から研究と準備を進めてやっと今月から当店のすべての本バス毛芯のスーツをさらに前肩にすることができました。型紙が変わるわけでなく「製法」を徹底的に見直して前肩に仕立てる。柴山登光先生が指導するハンドメイドの技法をひと工程ずつ丁寧に工場縫製にも活かすことを目指しました。例えば毛芯を表地に据え付ける前のしつけ糸で縫う工程、実際毛芯を縫って据え付ける工程、袖を縫いつける工程、プレスの工程など複数の工程を柴山先生に一箇所ずつ見直し、実際に縫い方を指導して頂きやっと完成しました。縫製工場はもちろん変わりませんしパターン、サイズはこれまでと全く変わりません。
そしてこれは肩の着心地の改善だけにはなく、上着が首により吸い付くような着心地になり、より美しくスーツが見えることにもなります。
工程の見直しについて一部ご紹介します。

mect1

mect3
右が今まで、そして左が前肩化したもの。
アームホールが前がふくらんで理想の「そら豆状」になっているのがわかります。
mekt2
現場でオペレータさんにひと工程ずつ縫い方を指導する柴山登光先生
mekt4
理にかなった方法で縫われた服は美しい。
DSC03423
さらに前肩にしたスーツ。この部分がテーラーの腕の見せどころ。