今回のピッティイマジネウォモの後、山登りに行った記録。
妻は義父が亡くなってずっと一人実家で暮らす母のことを心配していた。コミュニティ内のサークルを主宰し、詩吟の師匠も勤めしっかりした義母だったが、歩行困難になって昨年10月に入院。妻は毎週のように里帰りして義母の世話していたが今年になってからの衰弱ぶりに心を痛めていた。そして4月初めに義母は亡くなった。
そんな状況を見ながら今年のイタリア出張は一人で行くことも想定したが、今年は無理なので一人で行ってと言う妻をキャンセル料はボクが負担するからと半ば無理矢理航空券を予約したのは3月中ば。今回は同居している母にも遠慮して、通常より1日少ない5泊7日のショートヴァージョンで便を予約した。

義母の喪中の間、妻とはイタリア、ピッティ出張の計画は話題にもできなかったが、5月半ばみ四十九日が過ぎ、妻の心の痛みも癒え始めたころそのことについて話し始めた。妻の家庭はもともと旅行好き、生前義母は妻のイタリア行きを応援してくれていたので、だんだんと妻も旅に前向きな心を取り戻ていた。
我々のライフワークでもあるカラヴァッジォ巡礼はヨーロッパでは残すところウイーンとベルリンだがピッティの後はどうやりくりしても2泊3日しかない。移動時間の節約で今回はイタリア国内に限られる。カラヴァッジォ巡礼はあきらめて我々の最近の趣味である登山に目を向ける。
イタリア北部にドロミテ山塊が気になる。山脈でも山地でもない、山塊という言葉の通り大地から巨大な岩の塊がせせり出ている画像を見るとは本当にこんな場所があるのか信じられなかった。

ドロミテはイタリアではドローミティと呼び、長靴の形をしたイタリアで考えると、靴の口、右側のあたり、オーストリアとの国境に接する。中心の街はコルティナ・ダンヴェッツオ。スキーをやらないボクでもスキーの聖地であることは知っている。フィレンツェからはヴェネツィアメストレまで特急で1時間半、そこからバスで2時間半でコルティナ・ダンヴェッツオに至る。
ただ五月の連休にミラノに行ったお客様がその頃イタリアでは季節外れの寒さで雪が降り寒さで部屋で震えていたと嘆いていた。5月末、リアルタイムの現地の姿を見るウェブカメラでドローミティの山の様子を見ると雪で真っ白。ただコルティナの街は雪が残るが雪で閉ざされてはいなかった。泊まる予定のコルティナのホテルにメールをして状況を聞いてみる。するとホテルから転送されたのかドローミティガイド会社のスタッフ、エンリカからメールがあった。今は雪が多いが6月の半ばには問題ないはず、そして山岳ガイドはグループあたり320ユーロで受けるとも書いてあった。自力で歩き節約しようとも思ったが安全もあるしそうそう行けるところでもないので思い切ってメールでガイドを頼んだ。

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フィレンツェも好天。明日が楽しみ。
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コルティナ・ダンペッツォまでのバス

登山が楽しいかどうか9割5分は天気で決まる。雨降りで何も見えぬ中、ゴアテックスを着てとぼとぼ歩いても楽しくもなんとも無い。天気の悪い情報を知るのが怖く直前まで天気予報を見ずにいた。ドロミティに行く一日前6/12、明日からの天気は良いことをフィレンツェのホテルのテレビを見て初めて知り心躍る。ピッティイマジネウォモの3日目を午前中見て、それからフィレンツェサンタ・マリア・ノヴェッラ駅からヴェネチアメストレ駅までの電車に乗る。車窓からはあまり代わり映えのしない景色が続き約1時間40分で電車は15分遅れてメストレ駅に着いた。ただコルティナ・ダンペッツォまでの高速バスの時間まで小一時間あるのでビールを飲みながら待つことに。
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ヴェネト平野を抜け高速道路は山に向かう。
海沿いの街メストレ駅のホームからすぐのバスターミナルでコルチナ行きのバスに乗るとすぐ出発。ヴェネチアマルコポーロ空港に立ち寄ったあとバスは高速道路で北の山にまっしぐら。ヴェネト州の畑の続く平野を一時間くらい走るとバスは山道に入る。高速道路をおりてもイタリアの道はロータリーがあるから信号はなくバスは快適に走る。進むに従いバスの窓から見える山は徐々に峻険になり、気持ちは山の高さとともに高まる。
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高速道路からも雪山が見えてきた。
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車窓からは氷河が削ったU字谷が
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コルティナ・ダンペッツォの手前の街。
コルティナ・ダンペッツォまでの道の途中にも小さな街がいくつか有り、リゾート地やホテルもあるようでそこで降りる客もある。そんな街をいくつか過ぎ、コルティナ・ダンペッツォに着いたのが午後6時。まだまだ陽光が降りそそぐ時間。街の周辺すぐ近くに険しい岩山がそそり立つ見たことない景色にめまいすら覚える。ここは一体どこなのか皆目見当がつかないのでとりあえずキャリーバックを引きながら歩くとすぐにホテルが見えてきた。
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まるで絵葉書。泊まるホテル越しにドロミティ山塊。
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長旅ののちホテルに。
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レストランを目指し登るみちすがら
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小径で見かけた小さな礼拝堂
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スキー場に隣接するレストランCHARLOT TOFANA
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地元のハムにホースラディッシュのシンプルさがうまい。
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なぜかエビフライ
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地元の味、お団子状のパスタ。
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ポルチーニのスープ
昼のビール以外まともな食事をとってこなかったのでお腹が空いてきた。ネットで探した山のレストランに明日へのトレーニングがてらホテルチェックインもそこそこに登って歩くことにする。
絶景の中歩くこと30分。スキー場に隣接するおめあてのレストランCHARLOT TOFANAに着く。だんだん夕焼けに染まる雄大な岩山を眺めながら、地元の料理をいただいた時間はプライスレス。明日は山登り、どんな一日になるだろうか。
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夕日に映える山塊
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トファーナから射す後光。