うなぎは美味い。蒲焼きにすると最高。色々な店があるがうなぎに貴賎なし、わたしは小異を捨てて大同につく派で日本じゅうどこで食ったって美味く感じる。蕎麦だって赤ワインだってうんちくを語らずありがたくいただくのがジェントルマンとしての我が流儀。そしてうなぎがいくら美味いからといってのべつまくなしストレス解消で喰っていたらありがたみも薄れるというもの。そんな有難いうなぎは年に一度、浜松に住む義母と喰うことにしていた。しかし義母も4月に逝った。

広島の親戚からうなぎの蒲焼が送られてきた。広島の親戚は街の中心部でたこつぼと言う名の知れた割烹料理店を営んでいて、中国地方のミシュランの星を持っている。そこのうなぎだから美味いに決まっている。箱の中のうなぎは3本。夕方娘は幸い久しぶりに会う友達と食事はいらないと出かけので母と妻と僕で1本ずつ食べることになった。うなぎは頭が付いた一本を白焼にしてあるので、軽く焼いてタレをつけるだけで美味い。僕はたまにはひつまぶしでもいいかと思ったが、母は長焼きが良いと言うので、焼いたうなぎをざっくり4つに切って食べることになった。食前、駒ヶ根で買ったマルスのモルトウイスキー越最をソーダ割りにして飲んでいた。まずあてに頭の部分を食べる。骨が多いがカリッとして結構うまい。うまい部分だけをチューチュー吸って骨は出す。スモーキーなハイボールとの相性は完璧。後は大振りの4枚の蒲焼が残る。一切れにはわさびを乗っけ、一切れには山椒をかけて味の変化をつけながら食べる。まさに至福。1切れ半残してそれはご飯で食べることにする。ご飯は3人で一合だけだがちょうどタイミングよく炊きあがった。喰うことには目が無い母がその時間にセッティングしたのだろう。
ダイエットをして以来白いご飯を食べる機会がめっきり減った。白米で何かをおかずにすれば間違いなくうまいが、それを続けていたら必ずリバウンドしてまた太ってしまう。でもさすがにおかずの神であるうなぎなら白米を食べてもバチはあたるまい。久しぶりの炊きたての飯を塗りのお椀に軽くよそう。米つぶが真っ白でふわふわ湯気を出しながらピカピカ光っている。おおぶりのうなぎの蒲焼を少しの飯でいただく贅沢にごちそうさまと深くこうべを垂れる。ふう。来年まで健康でいよう。