私は40年もの長きに渡ってテーラーをつづけています。今はおかげさまでロロピアーナ社、エルメネジルド・ゼニア社と直接取引して、イタリアにも気軽に行けるようになりました。1980年代当時はイタリア、英国の輸入服地は何社も問屋、商社などを経由してしか入りませんでした。そのころ香港はまだ英国。フィンテックス、モクソンなどmade in Englandの紳士服を扱う商社が香港に支店を持っていました。そこから買い付けるとコストが下がるということで、当時飛行機代と3泊ホテルがついて6万円くらいで行けた香港に英国素材を買いつけになんども通いました。

香港の目抜き通り尖沙咀、香港島中環で日本で聞いたことのないキレイなショップ「GIORDANO(ジョルダーノ)」を何軒かみつけました。入ってみるといいデザインのカラフルなポロシャツが1000円?2000円で並んでいました。有名ブランドのコピーではなく自社のGIORDANOブランドです。そのときは香港ブランドとは知らずイタリアブランドと思っていましたが、気に入ってすぐ2,3枚買い、日本に帰って着てみると悪くないので、次に行ったとき約10枚大人買いしたりもしました。

日本はそのころ、ユニクロ、無印良品などはなく、デザイナー&キャラクターブランド通称DCブランド全盛時代、本物もまゆつばものもいりまじってスーツ、シャツ、靴だけでなく、トイレのカーペット、スリッパにまでブランド刺繍の入っていないものはないいわばファッション暗黒時代でした。GIORDANOのアイテムに、そのころ日本にはなかった魅力を感じていました。

現在香港では、英国からの返還の際に世界に約束した50年一国二制度を破棄し、国家安全維持法を施行しました。自由の価値を知っている人々が、中国共産党により強権的に束縛されたらどれほどの苦痛でしょうか。
今日の日本経済新聞で、香港民主派よりのアップルデイリー紙創業者のジミー・ライ氏が国家安全維持法違反で逮捕されたことを知りました。ジミー・ライ氏はGIORDANOの創業者でその後アップルデイリー紙を創業したとのことです。香港島と尖沙咀をスターフェリーが行きかい、海沿いに高層ビルが立ち並ぶ香港の景色はいまも変わりません。でも香港では完全に報道の自由は消え、かつての自由港香港は消えました。こうやって中国共産党に批判的なブログを書いていることはいま香港では「国法に触れる」となのです。

昨年、愛知県ではあいちトリエンナーレに展示された慰安婦像を撤去しただけで表現の自由を蹂躙したと大騒ぎでした。あれは県民の税金によるイベントの展示にふさわしくないということだけで、プライベートなスペースでどんな展示をしてもだれもなにも文句は言いません。なにも自由を束縛したわけではないのです。先日も安倍総理の記者会見で決められた質問時間が終わっても「まだ質問がある。」と言い続けた記者を係員が静止した際、手が触れたそうで、それに言論弾圧だと新聞記者さんマスコミさん大騒ぎです。日本は平和で自由そのものですね。それら大騒ぎした人たちはお隣であり日本にも身近な香港で起こった大きな自由と民主の喪失にサイレント、なにも言わないのには、ちょっとびっくりし、ちょっとがっかりしています。

ユニクロを先んじていいデザインのカジュアルアイテムを安く提供してくれたGIORDANO。1600年イタリアで、真実を貫いてローマ・カンポディフィオーリの露となったGIORDANO BRUNO のようにならず、ジミー・ライ氏の自由が回復することをこころから希望します。

わたしのワードローブにあるGIORDANOのポロシャツ