当家の朝、娘がいつもスマホで流して聞いているのは邦楽。わたしが中学生の頃は洋楽が全盛でした。同級生の多くは「ミュージックライフ」を読んでいたし、新聞には邦楽LP売上げランキングと洋楽LP売上ランキングが掲載されていました。その頃洋楽のランク1位は長くキャロル・キング「つづれおり」でそのあとの1位はCSNYの4ウェイストリート。流行っていたハードロックは「レマン湖のほとりで火事があって、その煙が湖に流れた。」という全く意味の無い歌詞を持つ曲もシャープなギターサウンドとおぼえやすいリフレインで熱狂的に好まれていました。英語で歌われる内容などわからないからまあどうでもよかったんですね。チューボーと言われるのに十分値する愚か者でした。

30歳の頃だったか、テレビコマーシャルで印象的なアカペラ「 TOM`S DINNER」を聞いて、その歌を歌っているスザンヌ・ヴェガという女性シンガーソングライターを知り、CD「孤独 Solitude standing」を買いました。その中に「ルカ」というシングルカットした曲があり、シンプルで良いメロディだったのでよく聞いていました。英語の歌の内容も知りもせずに。

近頃フェイスブックでスザンヌ・ヴェガのことが出ていて、懐かしい気持ちでウィキペディアで調べてみました。今はすぐ調べることができるの便利な世の中ですね。すると彼女は私より一つ年下でもちろんまだ現役でアーティストを続けているそうで、日本にも何度か来日していました。そしてウィキペディアの中で「ルカ」は児童虐待を歌った歌だと書いてありました。わたしは児童虐待は、なにも知らない子供の全人格を否定する最悪の犯罪だと考えていますので、改めて「ルカ」歌詞を読んでみました。

僕の名前はルカ
アパートの2階にすんでるよ。
おねえちゃんの上の階。
僕のことは見たことあると思うよ。
もし深夜になにか聞こえても
喧嘩や揉め事みたいでも
それが何かは聞かないで
それは何かは聞くんじゃないよ。
原因はきっとぼく変な子だからかな。
もっと落ち着かなきゃ
原因はぼくがおかしいからだよ
生意気じゃないように振る舞わないと
どうしてそんなことするのか聞くと
きっとおねえちゃんが殴られるよ
ぜったい逆らっちゃだめ
ぜったい逆らっちゃだめだよ。
(ご興味のある方はネットに全文がありますのでお読みくださいませ}

スザンヌ・ヴェガ LUKA

親に虐待されている男の子の心を歌っていています。先日歌詞の内容を知り改めて曲を聞いた時、不覚にも涙がこみ上げてきました。ニューヨーク下町のおんぼろのアパートで酔っ払いの父親の暴力を受けながら、けなげに生きている8歳のルカくんの姿が目の前に現れたのです。

あのプリンスは虐待された幼年時代を過ごしていたからか(映画パープル・レインでその事情は描写)、この曲をもっとも好きな曲だと言っています。きっとLUKAは自分のことだと思ったのでしょう。くわしくはこちら

初めて聞いた当時は歌詞を知ろうとせず、サウンドだけ聞いていた愚かさを反省しつつ、歌を聞いたころの懐かしい思い出も蘇りました。そして愛だの恋だのだけ歌っていると思われているポップミュージックの短い2,3分の中に深い世の中への洞察、観察があることをあらためて認識しました。