今からブリュッセルの宿で書いています。早いものでピッティイマジネウォモの旅もあと一泊を残すのみ。

若い頃はそれほど旅にこだわりはありませんでしたが、旅好きの妻の影響で、長く旅に親しんで来ました。接客を仕事としているからか旅に出た時くらいは自由が欲しくて団体旅行は極めて苦手、個人旅行に徹して来ました。手荷物だけで移動するスタイルでささやかながらノウハウを積み重ねて来ました。

今回実現できたのは「腹6分目」。せっかくどこどこ来たんだからなになに食べなきゃとずっと来ましたが、そう思うとついつい食べ過ぎてしまいます。地元のお酒は美味いのでついつい飲み過ぎてもしまいます。旅で暴飲暴食での体調不良はツラい。お恥ずかしいかぎりですが、この歳になって、控えめ腹6分目がやっと身につきました。

旅で得たものは

いろいろ旅の楽しみもあるでしょうが、我々にとって最大の旅の楽しみであり目的は美術館巡り。オールドマスターの絵はヨーロッパには大量にあれど、傑作はそれこそプライスレス、金銭で換算することはできません。そんな絵と一対一で直接対峙できる美術館は旅の最大のクライマックスでしょう。

39歳ではじめてイタリアに行った時はそれこそ何も知らない無知な輩でした。フィレンツェウフィッツイに連れて行かれ、ボティッチェリのビーナスの誕生を見た時、あ!見たことある絵だと感激したのが美術館巡りのはじまりでした。

ペルセウスの彫刻の向こうが我が美術の旅の始まりのウフィッツイ

美術はなかなか印刷物では伝わらないもので、書物で美術史を学んでも身につけるのは難しいもの。実際見て、画家の素晴らしさにじかに触れて記憶に収めるものです。ボティッチェリにはじまり、ルネサンス以降のダビンチ、ラファエロ、ミケランジェロ。そして巡礼の旅をしたカラヴァッジョ。ブロンジーノ、アンドレアサルト、ルカシニョレリ、ラトウール、レンブラント、そして世界最高の画家であるベラスケス。近代もピカソ、ゴッホ、セザンヌ、モダンアートではモンドリアン、ロスコ、ポロック、エドワードホッパー、ホックニー、ウォーホールなどなどいろいろ実際に見てそれまで全く知らなかった画家を現地で知って素晴らしさを心に刻んで来ました。画家の魂という宝物をひとつひとつ拾って来ました。

アントワープ王立美術館は素晴らしかった。

壮麗なアントワープ中央駅
アントワープ中央駅

昨朝ブリュッセルから電車でアントワープに出かけました。情報もないまま、駅から離れたアントワープ王立美術館に辿りついたのは午前11時。

開いていてやっとの思いで入館、2階にオールドマスター、一階モダンと分かれています。アントワープはルーベンスの故郷でもあり大作いくつかと、ヴァンダイク、ブユーゲル、クラナーハなども多く所蔵されています。オールドマスターだけが羅列されているのではなく、その絵に触発された近代作家も散りばめてあります。ルーベンスの絵を実際に修復作業をしている現場を見せてくれたり、ルーベンスの工房の様子をバーチャルリアリティで見せてくれたり充実した内容です。

ブリューゲル父
ルーベンスの絵の修復作業中
オールドマスターの間にパスキアも展示
この彫像を
書いた絵も

一階のモダンでは常設展のほかにジェイムズエアンソールという知らなかった作家の回顧展が行われていました。古典的な絵から印象派のような絵画、そして代表的な仮面のモチーフなど強い筆力の作家でした。聞くとベルギーの最重要作家の一人で肖像がお札のデザインにもなったそうです。また旅から果実をひとついただきました。

ジェイムズエアンソールと
ジェイムズエアンソールと
ジェイムズエアンソールと

マスターピースに出会う

有名作家には最高傑作マスターピースというものがあります。習作、小品などを重ねて、作家が命を注いだ作品、一生求めてたどり着いたモチーフなどがマスターピースでしょう。バロックの巨匠の一人ルーベンスは工房で分業制で製作し続け、多くの大作を残した事で知られています。ルーブルにあるカトリーヌメディシスの一生は何枚もの大作の連作で大きな部屋を埋めています。ルーベンスはどこにでもあるというので、またルーベンスかあと正直軽く見ていました。しかし日本ではネロとパトラッシュで知られるアントワープ聖母大聖堂にある3枚のキリスト受難の絵はルーベンス一人で描いたとされ他の作品とは全く濃密さが違っていました。

アントワープ聖母大聖堂
ルーベンス キリスト降架
アントワープ聖母大聖堂