今日は東京で働く息子の誕生日。父親としてはおめでとうのひとことも言いたいが残業など勤めている会社のことは知る由もなく、いきなり電話するわけにいかないしメールを送ったりするなどあんまり親ばかぶりを発揮しても息子も迷惑するだろう。先日、帰省したおりくたびれた靴を履いていたのでこの機会に靴を買って住んでいる寮に送った。ひとりぐらしで辛い事もあるかもしれないがなんとかがんばってほしいという思いをこめて。

私は洋服屋なのでちゃんとした服を着なくてはならない。仕事を始めた35年前は売れ残りの服地でスーツを作っていたがいまは一番売れる服地で自分自身のスーツをつくるようにしている。わたしの着ている服をお客様に欲しいといわれる「ハウスマウカン」的な効果もあるかもしれないが一番重要な事は自社の洋服のモニター。多くのお客様が着ることになる素材のパフォーマンス、性格を知るということはとても重要だと考えるから。服地というのは仕立てて試してみなければ分からないことも多い。仕立て上がってすぐは一日着た後のシワが気になっても年月が経つと気にならなくなるものもあるし、硬い服地だとおもっていたものが案外着心地がいいと発見する事もある。洋服屋というものは採寸する場合基本的にクレームを恐れ、やりすぎなサイジングはしないものだ。 だから自分の服には実験的にいっぱいいっぱいのサイジングをしてみることもある。そうやって気付くサイジングのポイントもある。先日当店で別注した濃紺のネクタイも自分で使っている。こころを込めて作ったが出来上がりの締め心地はわからないので心配していたが締めやすいので気に入っている。これなら自信を持ってお客様におすすめすることもできる。セレクトショップなどでのお洋服のお買い物も通常はバーゲンやアウトレットで掘り出し物を見つけるのも大好きだが思い切ってプロパーの価格で購入し他の店の接客を知るのも勉強になる。そうやってモニターすることは楽しいことでもあるが洋服屋にとって学びの場でもある。