ブログは日記を時系列順にならべたもの。そう考えていたのでいままでその日その日のできごとをここに綴っていた。先日のみかんについてのブログはその前後の日のことではなく一週間前の思い出を書いた。書いたのを改めて読んで思ったのはその日に起こった事をリアルタイムで書くだけでなく胸にしまっておいた思い出をその日に思い出したのならそれをブログに書くのもいいのではないかということ。僕の人生は現在と過去で成り立っている。未来のことは何が起こるか分らないのでまだ僕の人生ではない。過去の思い出も自分にとって大事な資産なのだ。そんな思いでカテゴリー「旅の思い出」を見ていただくとうれしい。
ぼくは貧乏性なので自分のお金でヨーロッパに旅をするならリラックスできるとはいってもあえて過大なコストをかけてビジネスクラスに乗ろうとはおもわないし街の中心のこぎれいな宿には泊まりたいとは思うけど排他的で居心地の悪い超高級ホテルになんかとまりたくもない。またことさら世界的に有名なレストランにいくより地元民に愛される料理屋で飯を食いたい。そんな貧乏性な旅人でもとびきりエレガントでラグジュアリーな経験ができる場所がある。それは美術館だ。オールドマスターつまり巨匠の傑作絵画、彫刻はほんとうに数が少なく欧米諸国はそれを国家の威信にかけて自国の美術館に収蔵しようと血道を上げて来た。そんな天文学的価値の絵画を在を手が触れるほどの近くで(ただしモナリザをのぞいて)そして英国に至っては入場料無料で公開している。名画について語られる文学作品や映画などもあり西欧文化の偉大な遺産である巨匠達の絵画を前にしているといままで縁がないと思っていた「世界史」が自分の前に現れてくる気もするのだ。
お菓子箱のようなボルゲーゼ美術館。小さくても内容は凄い。
そんな美術館の中で一番好きな美術館のひとつは間違いなくイタリア、ローマのボルゲーゼ美術館だろう。ローマの市街中心部からボルゲーゼ美術館までは交通機関も少ないし地図上で見ると歩けるような気がするがずっと上り坂なのでタクシーで行くのが賢明だ。ボルゲーゼ美術館はボルゲーゼ公園の一番高い場所にあり以前はボルゲーゼ家の夏の別荘だったらしく四角く端正でお菓子箱のようなかわいい建物だ。ウェブサイトで日本から2時間見る事ができるチケットの予約をとり、予約の時間の30分前に着くようにする。セキュリティチェックを受けたり荷物を預で待っているとスタッフから呼ばれ入館する。一階は絵画で二階が彫刻となっている。ルネッサンス、マニエリスムの後バロックの巨人、カラバッジョとG.Lベルニーニの作品がコレクションの中心となる。カラバッジョ、ベルニーニが一点あってもその美術館に行く価値があるというのにここはベルニーニの最高傑作のひとつ「アポロンとダフネ」「ダヴィデ」「プルトンとプロセルビナ」「真実」などたくさんありカラバッジョも「馬丁たちの聖母」「聖ヒエロニムス」「聖ヨハネ」作家最期の作といわれる「ゴリアデの首を持つダヴィデ」などカラバッジョファンの聖地でもある。ラファエッロ、コレッジョ、クラナッハ カノーヴァなどのマスターピースばかりありこれを集めたボルゲーゼ卿の慧眼に恐れ入るばかり。決して大きい美術館ではないがすばらしい作品しかないこの空間にいるとせつなくなってくるほどだ。
カラバッジョの作品
画集ではその迫真はわかるべくもないが。ベルニーニのマスターピースのひとつ「アポロンとダフネ」この彫刻の前に立つと一枚一枚の葉が彫刻されていてその迫真さに気が遠くなり恐怖さえ覚える。
館の外はボルゲーゼ公園。美術館からまっすぐのびている並木道を下がって行く。距離はあるが下り坂だから楽に歩く事ができる。途中ゲーテの銅像などをみながらどんどん歩いて行くと断崖のようになっている丘の上に立つ。そこがピンチョの丘。ポポロ広場の北の壁面の上がそのピンチョの丘になっている。この壁面には噴水もありそれ自体バロックとなっている。(下の写真参照)ローマの有名なポポロ広場。まさにバロック的劇場空間。広場はずっと向こうが見渡せる3本の道とその間に立つ双子教会、これまた「マテオの召命」などカラバッジョの名作が3点あるサンタマリアデルポポロ教会もある。こんな見所だらけの広場もそうはあるまい。
ボルゲーゼ美術館の前からずっと下りの並木道が続く。
ピンチョの丘の上からまだ小学生だった娘と。遠くにサンピエトロの大キューポラが見える。
ピンチョの丘からポポロ広場を眺める。
下つまりポポロ広場からピンチョの丘を眺める。これ自体バロックの作品となっている。娘と撮った写真は最上部の欄干のところから
3つの通りが見通せる場所から。間にあるのは双子教会。