昨日娘の通っていた中学校の入学式があり桜の時期には間に合わなかったけれど44人の新一年生が新たに校門をくぐった。不似合いではあるがPTAの会長をしているので壇上に上って挨拶をした。実のところ卒業式の挨拶と入学式の挨拶がPTA会長の一番メインの仕事でこれが最後の大仕事となる。人と話すのは好きだがオフィシャルな式典の壇上で話すことに慣れてはいないのでカミカミの内容のないヘタなスピーチで伝統ある丸の内中学の名を汚してはいけないとこの日のことを思い悩んでいた。かなり前からどんなことを話そうか考えていたが一番大事にしようと思ったのは、誰かが言った言葉を借りたり紹介するのではなく「私自身のことば」で新入生に語りたいということ。4日前の朝5時からワーブロで作り始め、いくつか新中学生に言っておきたいトピックを考えてそのなかから2つに絞りだいたいの文章を作った。iphone5に付属するストップウォッチを見ながら読んで時間をはかり三分三十秒程度に収まるように推敲して行った、わたしは滑舌が良い方ではないので言いにくい言葉は別の言葉に置き換えたり削除したりもした。そうやって作った原稿を前日に10回以上読み返しただろうか。それでなんとか心が落ち着き、住吉の「平八郎」にでかけすこしだけ景気付けに飲んだ。隣り合わせたコジマさんというジェントルマンがピノノワールをぼくのグラスに注いでくれた。
当日の朝は我が家の仏壇になんとか良い入学式になるよう亡き父に手を合わせた。気がついたらその日は父の月命日。だれもいない開店前の店の机の前でもう3回原稿をよんで自転車に乗って中学校にでかけた。 服は前回のブログに書いたロロピアーナの一張羅のダブルブレストを着込み無地のネクタイをしめ、もう私が準備することはすべてした気持ちで、大げさだが「人事を尽くして天命を待つ」。自転車で転ばないようにちょっとスビード落し目で走った。
学校に着いて校長教頭来賓の方々と顔を合わせ入学式の会場である体育館に向かいそれから壇上でスピーチをして入学式が終わるまではアッと言う間。 帰り道、肩の荷がおりたのか踏むペダルも軽やかだった。
駄文だがこれがその挨拶の一部です。

 新入生のみなさん、 中学の三年間は人生の中でとても大事な時期です。こどもの身体からおとなの身体になっていき親とは違う意見をもつようになる頃。本や音楽なども親に与えられた物ではなくじぶんで選んだものが好きになる時期。学校では日本人として独り立ちできる知識を習う時期。自分というキャラクターができてくる時期が中学の三年間です。今日、同じ制服を着て、ここに集まったなかまとそんな大事な三年間を過ごすこととなります。大事な時間を共有するということは中学のあいだのみならずこれから末永くつきあっていくことにもなります。
わたしは今年で54才ですが40年近く前、今日のみなさんと同じように中学の入学式で顔を合わせた仲間達といまでもよくいっしょに会って話したり、人生の喜びをわかちあっています。現代はネットで見えない相手と交流する時代かもしれませんが新一年生にとってリアルな世界での一番タイセツなともだちが丸の内中学校で出会った仲間になることを祈っています。