旨い料理屋を見つけるとはすぐまた食べたくなって出かける。いい街や場所を見つけるとまた行きたくなって再び訪れる。どうやらぼくにはそんなクセがあるようだ。18年前イタリアに初めて出かけたときもそれまで全くイタリアについて知らなかったぼくだったが、ああまたここに再び訪れる事が出来たらと思って結局なんども通うこととなったのもその習性ゆえかもしれない。
その前の週に通りかかった越前大野の街の町並みが美しかったのでこの休みの水曜日、またちっこいクルマに乗ってひとりででかけた。東海北陸自動車道を白鳥で降りて大野の街はそんな遠くない。2時間たらずで着いてしまう。九頭竜湖をながめ深い谷をはしったあと山間部から田んぼと畑のひろがる平野部にでると里芋の直売所があった。湧き水が豊富で水がおいしいので里芋も美味しく育つ。煮物に使う中ぐらいの大きさのものとそのままきぬかつぎとして食べる小さい芋と2袋買う。大きい袋にいっぱい入って900円となんだか嬉しくなってしまう。
平野部にはいると里芋畑や蕎麦畑が。越前大野
里芋直売所でさといもを仕込む。越前大野。
先日山中温泉と永平寺を結ぶ道で「竹田の揚げ」という地元で知られた大振りの油揚げをかったらことのほか美味しかった。福井県は油揚げの消費量日本一だそうだ。わざわざ大野から一時間かけて買いに行くのもなんだから大野のスーパーで美味しそうな別の油揚げ屋さんの油揚げを購入。そうこうしていたらお腹がすいて来たのでまた「梅林」さんに行く。地元産のそばだけをつかった味は有名でお昼時でお客様でにぎわっている。今日は大根おろしのおだしでたべる越前おそばとお造りをいただいた。大野は山国だが日本海から遠くないので良い魚がはいるのだろう。お造り極上でした。
お造り 梅林
大野は山に囲まれた街でいたるところに湧き水が湧く泉がある。それを「清水」と書いてショウズとよむ。まず街の真ん中にある「御清水」(おしょうず)にいく。ここは飲み水を汲むだけでなく街の人が野菜を洗ったり洗濯をしたりする場でもある。近くの朝倉義景の墓所に参ったらここにも清水が湧いていた。美味しい湧き水が湧く街なんてなんてすてきなんだろう。もちろん冬は雪がおおくきびしいかもしれないが都会に住むものにとってはいい空気、いい景色とともに湧き水が豊富なことに憧れを感じる。
御清水(おしょうず)越前大野
御清水には野菜洗い場や洗濯場がある。ここは地元の人が交代で清掃にあたっている。
朝倉義景墓所の前の義景清水。
大野の街の中心に小高い丘がありその上に金森長近が創建した大野城が建っている。江戸から明治に変わった世の中で明治6年の廃城令によって古い城を愚かにも壊してしまったがいまコンクリートで再建された城がのこる。山の麓に神社が有り、その脇が城へ登り口で歩く事20分で頂上の天守閣に着く。お城のいらかのむこうに日本の美しい景色が広がる。ああこの国に生まれてよかった。
お城の下に広がる大野の街。
そして豊穣な田畑。越前大野。
もうひとつ本願清水という湧き水の里に。清らかな水ゆえ陸封型イトヨという魚が住み、その生息地の北限だそうで天然記念物に指定されている。市で周辺を公園として整備して、イトヨの見学施設もある。観光客のすくない平日、ガラス越しに婚姻色の紅にそまったオスのイトヨが巣をまもる営みをみていたら時をわすれてしまった。
オスのイトヨとにらめっこ
本願清水 越前大野
名古屋からこの名水の里、越前大野までは往復280km。わがちっこいクルマは全行程リッター19.3kmで走りきってくれた。