COVID19の脅威が世界を覆い、悪いニュースに溢れたメディアとネットを見ていると、どうしても気分が沈んでしまいます。小さなお店はこれからどうしたらいいのか自問自答の毎日です。でも人としてこの時を生きている以上、この事態が終わった明るい未来があると信じて日々を過ごしています。

一昨年2018年9月から始まった「マエストロプロジェクト」は本日をもって満了、お客様からかわいがっていただきました西村はマエストロ課程を修了しました。4月1日から西村錠は御幸毛織本社勤務となります。
マエストロプロジェクトとは
昭和30年以前は、熟練の匠のテーラー=マエストロがお客様の身体を計測、サイズを決定して、仮縫いなどプロセスを経て、10日間ほどかけてマエストロ自身で縫い上げるものがオーダースーツでした。1980年代以降はテーラーの高齢化によるテーラーの減少で、縫製工場によるオーダースーツが主流となりました。
今オーダーブームと言われていますが、多くのオーダーショップは予算、テイスト、嗜好が違うお客様に対応するため、複数の縫製工場に依頼しているのが現状です。お客様の大切なオーダースーツを微妙に仕様が異なる複数の縫製工場に依頼することは正確に意図したスーツではなくアバウトなスーツしかできないのではないかと考えています。
一つの製法に向き合い、技術を極めていったかつてのマエストロの如く「現代の名工柴山登光先生が作った型紙に向き合い、そしてその型紙で作ったスーツをゲージとして使用。それをお客様に着ていただいて、その状態により着心地を察知して、サイズを調整しお客様のデータシートに反映させていく。40年以上縫製を担当している工場はそのデータを基にスーツを縫い上げる。その「サイジング」という技術を完全にマスターすることが今の「マエストロ」だと確信していました。
西村は1年半かけてその技術を学びました。実際西村が採寸したデータで仕立てたスーツをお客様に納品。そのお客様がそのデータで再びオーダーいただけることが日常となりました。これで「マエストロ」の技術が確立したと私は感じました。
またどこかで西村は「マエストロ」として活躍すると思います。そのときは私同様、サイジングの技術をマスターしていますので安心してまかせていただけます。

マエストロプロジェクト卒業写真

「トップレベルの販売現場を学ぶ」という名目で2018年の秋から本年3月末までの約1年半にわたり、オーダーサロンタナカにて研修させていただきました。不慣れな部分ばかりでご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ありませんでしたが、寛容であたたかいたくさんのお客様に囲まれて、非常に多くのことを学ばせていただきました。欧州出張も含め、初めて経験することの連続で言葉にできないほどの有意義な時間を過ごすことができました。4月からは御幸毛織に戻りますが、店にも時々顔を出しますのでオーダーサロンタナカを今後ともよろしくお願いいたします。誠にありがとうございました。 御幸毛織 西村錠