何ヶ月も前から計画して楽しみにしていたニューヨークの旅も気がつけばもう最終日。
49ストリート、ロックフェラーセンター近くにある、アートディーラーであるKくんの主戦場でもあるオークション会社クリスティーズで待ち合わせ。ゆったりした空間のロビーでスゴイ金額のアート作品が行き交うオークションの雰囲気を味わいました。ここではアート作品だけではなく、持ち主の死去などで行方を失ったたとえば5番街からセントラルパークをのぞむ、まさに本来の意味である邸宅=マンションの売買も行われています。リッチマンじゃない人間がリッチマンの生き方、経済に想いを馳せる一瞬でした。
それからウーバーでマンハッタンの北のハドソン川沿いに位置するメトロポリタン美術館の分館クロイスターに移動。中世のヨーロッパ、スペインの建物をそのまま移築して中世のアート、彫刻、建築、タペストリーを展示しています。休日の郊外でメト本館やMOMAの混雑とは違い、ゆったりと時が流れています。まるでヨーロッパ小都市の古城を訪ねた錯覚に陥ります。ここのロックフェラーから寄付された一角獣のタペストリーの連作はよく知られています。かつては大富豪の邸宅のディナールームあたりにかけられていたはずです。ここからマジソン街まで再びウーバーで戻りKくんとはひとまず別行動。
マジソン街を買い物目当てで歩いて下って行きましたが、クチネリ、ロロピアーナ、ジョンロブなど円安時代にはおいそれとは手が出ないショップが続いてわれわれにはお呼びでないという感じ。ここのプレーヤーでないことを悟りバスでホテルに戻ります。
ニューヨークの時間も残り少なく、ここで無駄な時間は過ごせないと、お上りさんのメッカと知りつつ、エンパイアステートビルを登りに行きました。前回息子と登った時は夜、夜景を楽しんだはずですがニューヨークに着いていきなり行ったのでなんだかよくわかりませんでした。でも今回は美術館だけで6ヶ所回り、ニューヨーク、マンハッタンの地理、距離感もかなり把握しています。それでエンパイアステートビルから見るニューヨークのランドスケープはこの旅の締めくくりにふさわしいものだった気がします。20年前行った時より内部のエンターテイメントが充実して、建設の様子、登りエレベーターの中で建築現場を突き抜けるCG、キングコングのフォトスポットなど楽しさ満載でした。またスタッフがすべてニューヨーカーとしてダンサブルなかっこいい身のこなしをしていてそれがおもしろかった。
エンパイアステートビルからの帰り、すぐ近くのブロードウェイにあるデパート、メイシーズでお土産のお買い物、手が出なかったマジソン街のブティックや超高級なサックスフィフスアヴェニューとは違い、プレーヤーとして参加できました。
この夜はニューヨーク最後の夜。お世話になったせめてものお礼にKくん、Sさんとステーキの超有名店ピーター・ルーガーでディナー。店の地下にある牛肉倉庫で常に風を送りながら何日も肉を熟成する、ドライエイジングビーフの総本山です。ブルックリンへの橋のたもとをUターンすると店の前に着きます。煉瓦作りのお店のドアを開くとウェイティングバーの前には人がたむろしています。席が整うまでニューヨークのマティーニでテンションを上げます。日本の倍はある大ぶりのカクテルグラスにすり切り注がれた冷え冷えのマティーニはあくまでドライ。素晴らしいのはここは超有名店ではありますが超高級店でありません。庶民も金持ちも美味いステーキを喰うときには、現金持ってブルックリンの老舗にいこかってな感じの気楽な店でした。
「世界のどこに行っても高級店にうまいもんなし、地元庶民の来る店に美味在り。」
ほどなく、席が準備でき、バーで頼んだお酒も持参して着席。予習も完璧で、トマトと厚切りのオニオンを挟んだ、ピータールーガーサラダ、手作りベーコンのサラダと、ポーターハウスステーキを3人前、妻はドーバーソールのソテーをオーダー。ワインはカリフォルニアのカベルネソービニオン。
ほどなくサラダがテーブルに。ウェブで見て、その大胆さにビビっていたサラダも案外普通に楽しめます。今度、新玉ねぎの時期にやってみようかな。ついに到着したポーターハウスはあくまで味わい深く、香りは完璧な熟成でナッツのよう。カベルネソービニオンのカリフォルニアワインをいただきながら無心でいただく肉の旨みったら。酸味と甘味が溶け合うピータールーガーソースで味わうのが一番良い。あんな巨大な肉塊もほどなく完食。でもこれではまだ終わらない。骨に厚く付いた肉を鋭利なナイフでこそげ落とし、T 字の白骨になるまで屠ったのでした。
あんな満腹だったのに次の朝は妙にスッキリ。K君もおんなじことを言っていました。