当店がコートの縫製をお願いしている北海道・小樽にある縫製工場を訪問しました。小樽には親類も住んでいたという縁もあり何度も行った土地ですがコートの仕立てをお願いしている小樽市街地の縫製工場にはいままで伺ったことはありませんでした。小樽がニシン漁で栄華を極めている頃、小樽のメインストリートに建築された石造りの立派な旧第一銀行の小樽支店。その遺構を縫製工場として利用しています。
縫製工場といえどもすべて手作り。
縫製工場というとオートメーションでできているイメージかもしれません。しかしいまだスーツを自動的につくる技術は開発されていません。パーツごとに配列された技術をもったオペレーターさん(いまは職人さんとは言いません。)が工程の順に仕立てていきます。一人ですべてを縫っているわけではありませんがグループによる手作り、「ハンドメイド」なのです。工程の途中で丸みをだしたり、イセをするため中間プレスも多くとりいれています。湿度の少ない北海道で仕立てたものが湿気の多い本州で見栄えが悪くなることを防いで、湿度のコントロールも工程に含まれています。
縫製工場はもっと誇りを持っていい。
メンズファッション雑誌で、欧州で学んだハンドメイドテーラーを取材してさも価値があるように取り上げているからかもしれませんが、テーラーがひとりで縫った洋服のほうがいいと思っている方がほとんどです。ただ仕上がった洋服の美しさを、先入観を無しで比較すると、パーツごとに技術を極めている縫製工場でのグループワークのほうが仕上がりは美しいのです。
それでも工場のスタッフと対話をしてもハンドメイドテーラーに対して劣等感のようなものを感じて仕方がありません。工場見学に来たテーラーたちが、上から目線でマウントしているのかなとも疑ってしまいます。われわれがその小樽の工場に依頼して仕上がったコートは美しい仕上がりだと高い評価をしています。どうか工場のスタッフさん、オペレーターさんが自分たちのしごとに対してもっと誇りを持ってほしい。セルフイメージを高めて欲しいと願っています。