22歳の時、父母と一緒に現在地でオーダー店を始めました。それまで父はカスタムテーラー向けにスーツ服地をおろし売りする問屋を経営していましたが、商売が立ち行かなくなり、直接一般のお客様にオーダースーツを販売するテーラーに転換しました。最初はゼロからのスタート、顧客は誰もいない中、親戚、知り合い、友人を頼ってオーダーを日々お願いしていました。東京のカスタムテーラーで勉強したとはいえほとんど素人だった当時のわたしにオーダーしてくれるお客さんなどまずいません。まさに苦難の日々でした。

そんなとき母親の実家が静岡市内でレディースのブティックをしていて、その知り合いの客様にオーダースーツの紹介をしても良いと言われ、毎年秋と夏の2回オーダー会をしていました。オーダー会は三日間。その時オーダーをいただいたお客様の顔は忘れられません。親戚の計らいには大感謝でしたが、静岡で永くブティックをやっていた親戚の知り合いになかばむりやり買ってもらっていたので、肩身の狭い思いを心のどこかでずっと感じていました。45歳になった頃、名古屋でのオーダーが忙しくなってきたので、静岡のオーダー会はやらなくなりました。その後、静岡のオーダー会に来てくれたお客様がわざわざ当店まで来てくれたことには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

今日、時間があったので、ひとり高速道路を飛ばして静岡の街まで。当時オーダー会を開催した親戚の店には立ち寄りませんでしたが、オーダー会の夜の夕食によく通ったアメリカンステーキのお店カウボーイに20年ぶりに訪問。昼過ぎオーダーストップギリギリの到着で間に合うかドキドキしましたが、鉄板の上のステーキにホイップクリームとにんにく醤油をかける味とメニュー構成はまさに当時のまま。同じご主人が切り盛りされていて本当に嬉しくなりました。私にとってこころの味です。

服地を何着も束ねた荷物はとても重く、前日夜からの会場設営も大変でした。その三日間のためにダイレクトメールもつくり準備を重ねたオーダー会、よく売れた日は喜び、ダメな日は落ち込みまさに一喜一憂のあの頃。オーダー会が終わり、小さな国産車に荷物を積み込んで東名高速をひた走り、名古屋に着いた時は本当にほっとしたものです。思えばそんな日々が今の私を育ててくれた事は間違いありません。

20年ぶりの訪問
リーズナブルでも美味しい!
友達にも会いました
懐かしい呉服町