昨日からロロ・ピアーナデニムフラワーのパンツをオーダーされるお客様で当店は賑わっている。デニムフラワーというのは独自性もあり、味わいのある服地だと思う。南フランスのニーム市で織られるサージ織りが起源(セルジュ・ド・ニーム)とされ、アメリカで花開いたデニムはいまや世界中のファッションアイテムとして欠かせないものとなっている。それがロロ・ピアーナ社の手で料理とするなるととやはり間違いなくエレガントな香りの素材となるのがものづくりの面白さ。
毛織物会社は会社ごとにテキスタイルデザイン部門を持っている。その会社ごとクセというか特色のある素材デザインをリリースしてくる。例えば女性デザイナーアイリーン氏率いるドーメル社はビビッドな柄が得意だし、エルメネジルド・ゼニア社はシンプルで男らしいデザイン。ロロ・ピアーナ社のデザインチームはエレガントな素材を品格を保ちながらクラシカルなデザインで勝負してくる。このデニムフラワーはそのテキスタイルデザインチームの意図がはっきりわかる素材でロロ・ピアーナがデニムを作るとこうなるよという主張がこの素材には込められている気がする。
優秀なカリフォルニア産のオーガニックコットンを100%使用しているがスペック的には世にも珍しい細番手のコットンではない。表面の自然な凹凸感を出すためにコットンの糸も表面のなめらかなコーマ糸(羊毛なら梳毛に相当)ではなくカード糸(羊毛なら紡毛に相当)を使って3・1の綾という織り方でイタリア・クアローナのロロ・ピアーナ本社工場の羊毛用の織機で織られている。あらためて今回入荷したベージュを詳細に眺めてみる。表面に起伏がありざっくりとしながらも柔らかい肌触りはやはりコットンの素性が間違いなくいいため。オモテのベージュは自然な色合いだが裏にテラコッタの色を使うのはやはりイタリアならでは。イタリアの陶器テラコッタの色はさまざまなファッションアイテムに頻繁につかわれる色合いでイタリア製品のアイデンティティとも言っていい色。3・1の綾の場合3本オモテの色がでて一本ウラの色が見えることとなる。メインはあくまでベージュだがすこしテラコッタがわずかに見える味わいがコーデしやすく、シャレ味もある。このデニムフラワーで仕立てると着ていて幸せを感じるデニムパンツになるからまた続けて買い付けることになる。
デニムフラワーベージュの拡大画像。わざとムラ感のある織り目が秀逸。このようにすこしだけテラコッタが見える。デニムは一本織り耳が入っただけでセルビッチデニムと高評価になるが、字がはいった本格的なウーベンセルビッチがあるのはこのデニムフラワーだけではないか。これも毛織物用織機で織られているから。
全体の色イメージはあくまでベージュ。でも深みがある。