ラガッツオーイの山歩きは楽しく終わった。ホテルに帰っても疲れもなくちょっと気持ちが高ぶっていたかもしれない。サンドイッチをつまみながらレモンジュース入りビールを飲み直し次の日のことを考える。明日は午後3時半のヴェネチアメストレ行きのバスでコルティナ・ダンペッツォを発つ予定となっている。それまでどこか歩くことができないか可能性を考えてみた。幸い、雨の予報がだんだんいい方向に変わりつつあることをウェブで知った。ジャコモくんが感じ良かったので同じガイド会社に頼んでみようと住所をたよりにオフィスに行ってみた。午後4時40分に着いたら午後5時からの営業と看板に書いてあったので外のベンチでぼーっと待つことに。5時になっても誰も来なくてご縁がなかったかなあと思った10分後、シニョーラがひとり車に乗ってやってきた。事情を話すとなんとか明日空いているガイドを手配してみると何人かに電話してマウロくんが見つかった。明日も歩くことができるとハッピーな気分にひたる。その夜、行ったトラットリアではじめは誰もいなかったが一皿目あたりでヨーロッパの自転車野郎が30人くらいどかどかと入っきてビールを飲み始め、つぎのパスタがでるまで一時間半かかったことはコルチナの空気の綺麗さに免じて忘れることにしよう。ちなみにこのあたりはマウンテンバイクのメッカでもあるそうだ。
コルチナの街で見かけた忠犬
レモンジュース入りビールとサンドイッチ
夜半に雨がぱらついたものの、次の朝は雲の間から青空がみえる。山の朝食の旨さをあじわい、ホテル前で細身長身の若者ガイド、マウロくんに会う。
マウロくん
彼の小さいクルマ、スペイン製のイビザに乗り、今日の目的地ファーネの滝まで走る。20分ほどで駐車場に着き、森林の中を歩き始める。のどかな森林の中を歩いているとマウロくんが三つ葉のクローバーのような草をみつけ、口に運びこれはサラダにするんだといっていた。アチェトザリ?と呼んでいた。試しに食べてみたら爽やかな酸味があり、オリーブオイルと塩でいただくきっと美味しいだろう。日本でしらべたらどうやらカタバミらしい。マウロくんと話していたら、この周辺は渓谷つづきで耕作地はほとんど無いそうだ。そうなると林業、牧畜業になるはず。ただ自然の恵みも豊富でマウロくんのおばあちゃんはカタツムリもアーリオ・オーリオで上手に料理するらしい。道に鹿が歩いていると思ったら、それは首にカウベルをつけた牛だった。このあたりでは一家に数頭牛を飼っているそうで、それを放し飼いにしているようだった。夜になると集めに来て家に帰るのかな?そんな暮らしも街で暮らす我々には想像もつかない。森林の間から昨日とはちがった岩山が見える。森を空気を味わいながら歩きましょう。そんなことを言っていた。マウロくんにドロミティ山塊の有名なトレチーメ(3つの頂き)について聞いてみた。トレチーメに行く道は今は雪で閉ざされているしそしてそこにはたくさんの登山客、観光客がいて騒がしいと言っていた。一度ピサの斜塔に行ったことがあるがその有名な美しいと言われる広場には世界中からバスできた観光客ぎっしりで辟易したのを覚えている。
ファーネの滝の案内板
鹿だと思ったら
牛でした。
ここは牛が主人公
キツツキの空けた穴
アチェトザリ?カタバミ?
こんな道を登る
この名も知らない森ではそんなことはない。シニョール田中、もっとゆっくり歩こう、マウロくんは詩人のようにそういった。誰も通らない、動物や植物が主人公の静寂の中をゆっくり歩くのもこれもまた贅沢な時間だと感じる。昨日の失敗を糧にして今日は水もばっちり携帯した。でもここには湧き水がある。飲んだ分を湧き水で補給しながら1時間半ほど歩いただろうか、森から急に谷が見えるところに出て谷の向こう側に滝が見えてきた。そこがファーネの滝。雪解けの季節だから流量も豊富で雄大。険しく落ちる滝をよくみるとそこからなんと人がでてくる。滝の中に歩ける道があるようだ。マウロくんにあそこに行けないかと聞いてみたらやはり軽装備では無理でヘルメット、ハーネスも必要だとのこと。
ファーネの滝
深い谷に落ちる雪解け水
滝はくぐることもできるようだ。
時間に余裕があったので川の向こう側を歩いて行くことにする。途中、昨日トラットリアで隣り合わせた英国のジェントルマンとすれ違う。彼もパスタの出るのを待たされたひとり。しばらく登るとPONTEALTO と書いた木の橋を渡る。ずっと下に川があるのが見え深い谷だということがわかる。さっき滝を眺めた場所が望める。ここは何万年前もこんな状態だったのだろう。売店もない、自動販売機もないが自然は最高に豊か。こんなイタリアの過ごし方をしたのははじめて。
PONTE ALTO 高橋
谷は深い
豊かな時間を過ごす
U字谷は氷河が削ってできた谷
トラットリアであった英国から来たジェントルマン
コルチナの街に戻る。
コルチナの街に戻りドイツからビールを直送しているパブでランチをとって、帰途についた。
ミラノに着いたのは午後9時。この旅最後の夕食をガレッリア近くのトラットリアでいただいた。
ミラノにて
ミラノにて
ガレリア近くのここでいただきました。
ミラノ夜11時